マンションのスラム化


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マンションのスラム化スラムになるマンション
分譲マンションは今や500万戸を越え、うち築30年以上は73万戸で今後毎年10万戸のペースで増えています。日本全体の人口が減少傾向にあるにも関わらず、どんどんマンションが建設されています。
個人が所有するのは住戸の内部だけ、建物の外壁や柱、エレベーター、廊下などは共用部分であり、全世帯の所有となります。それを全世帯で管理修繕しなければならないのです。このマンションの区分所有権が建物の維持を難しくしています。
日本で建て替えを実現したマンションは、特例を認めた阪神大震災の被災地を除いて全国で40例ほどしかありません。
その40例の共通点は、敷地に余裕をもって建てられたため,建て替えに際して新たに分譲する住戸を追加出来、その売却代金が、既存所有者に経済的な負担を課す事がなかったのです。
ところが、近年のマンションは居住面積を規制一杯使っているため、建て替え時に新たな住居を分譲出来ずに経済的負担を強いられます。
それどころか建築基準法が改正されるたびに、今よりも小さな建物しか建てられないことが事実としてあります。これでは所有者の合意が得られません。
東京都の調べによると、築30年を超えて建て替え時期を迎えるマンションは、2018年には全国で5万戸に達し、震度7の大地震にも耐えると考えられている現在の耐震基準が定められる前に建築された、いわゆる「旧耐震」のマンションは全国に106万戸存在します。
このままでは居住に耐えないマンションが出現し、街中にスラムが出現するのです。
建て替え合意の難しさもスラム化に拍車をかけています。
都内にある築27年の、あるマンションでは、修繕工事が進みません。今まで適切な修繕工事をしなかったため、屋上や外壁のひびから雨水がコンクリートに浸入し、給排水管にも汚れが溜まっていました。
しかし、工事費を見積もったところ、修繕積立金では賄いきれないことがわかったのです。そのためには、各所有者が負担するか、借り入れする事になります。

ところが、高齢者世帯と賃借人に貸している所有者は、新たな出費に反対。マンションは所有者の多数決でしか議決できないため、今後も難航が予想されます。

これが新たなスラムの始まりなのでしょうか。

そしてマンションのスラム化は、建物が古くなったから起こるのではなく、人間が住まなくなった時に始まり進みます。
都市の郊外に林立したマンションの中から、都心の新しいマンションが出来るたびに若者が郊外から転居し次第に入居者が少なくなり、空き家が増える。

又残った者達は高齢化が進み、入居人が亡くなった後には入る人もなく次第に入居者が少なくなり、それにより管理費が集まらず、管理や修繕ができなくなりスラム化・廃墟、そして単なる大きなゴミの塊になるという過程が現実になりつつあります。 
08:30

あるマンションの悲劇面倒くさい合意調整
場所は九州、博多。駅から徒歩10分程度の所にある分譲マンションの悲劇です。1973年に竣工した130戸の9階建てですが、バブル当時所有者の7割が部屋を賃貸としていたため、大半は管理に無関心
そんな時、管理人と管理組合の役員がマンションを高く売ろうと計画。その話しにのらない人に待っていたのは嫌がらせ。廊下や階段の清掃がされなくなり、果ては暴力団の発砲事件まで発生。
そのため不動産業者の買収に応じる人が増え、結局97戸が買収されました。がしかし、その不動産会社は管理費を払わなかったため、料金滞納に陥り、電気がストップ。部屋の電気は電力会社と個人契約し復旧出来ましたが、エレベーターはストップのまま。水道はタンク車を頼み1階から汲み上げ。
不動産会社には、管理費滞納分の支払いを求め、裁判で勝訴したものの、業者は倒産。その後買収された部屋は複数の企業を転々。その間、建物はゴミであふれ、空家にはホームレス、不審火や部外者による自殺場所ともなったのです。
現在は福岡の会社が多数の部屋を所有し、電気、水道も再開させ、ゴミも片づけたが外壁の汚れはそのまま。しかし、この会社も東京のデベロッパーから買収の話しをもちかけられ、残りの人も応じる予定でしたが、2008年の不動産の悪化により、デベロッパーがその買収話しをキャンセルしたのです・・・。
2017年1月1日時点の東京都における世帯数は、6,994,147世帯です。約189万世帯がマンションで暮らしています。

東京都23区の戸建て住宅数は飽和状態ですから、将来は世帯減少でマンションでも空き家が増え、将来は建て替えや解体を迎える事になりますが、戸建と異なり、空き家問題をさらに複雑化させています。
解体・建て替え時は、分譲で区分所有権を持っている権利者との調整は、極めて難航します。
法律上は、4/5以上による多数の決議を要し、建て替えに反対する権利者に対しては、区分所有権の売り渡し請求をする事になります。

決議のための総会を開くにしても、空き家になっている世帯があれば、どこかにいるはずの区分所有者に議決権の行使を依頼しなくてはならず、空き家になった理由が死亡によるときは、相続人を対象とするのでさらに面倒になります。
このように空き家が多いマンションの建て替えは、合意形成から難問が山積みで、時が瞬く間に過ぎてゆき、それが理由でさらに空き家が増え、ズルズルとスラム化して行かざるを得ない状況を迎えるのです。



怖い高齢化個人の奮闘
以前建てられた大規模ニュータウンは今やスラム化になりつつあるのです。問題は住民の高齢化です。大都市の時代を経たマンションでも同じ高齢化を迎えています。
住民の高齢化が進むと、住民たちの多くは住居の改善に大金を費やす意欲はなくなります。それは、人生の残り時間が多くは残っていないからです。
残りの時間は自分のためだけを考えるようになります。そうなると、周りの事は気に掛けなくなり、その結果管理費や修繕積立金の滞納も増えてしまいます。お金は自分のためだけに使うだけになるのです。
たとえ共用部の窓ガラスが割れたとしても、気にかけなくなり、それが普通になっていきます。誰もそれが異常なことだと思わなくなってしまう。一旦その状況が始まると、あとはスラム化の進行スピードを増して行くだけ。いったんスラム化してしまうと、賃貸先の見つからないオーナーが「誰でもいい」から貸すといったケースも増えるでしょう。そうした状況では
犯罪の温床になることもあるかもしれません。場合によっては、そうした人たちが意図的に騒いで、残っている人の追い出しを企てるなどといったこともありえます。
そうなると、負のスパイラルです。しかもそれは他人事ではなく、今住んでいるあなたのマンションもすでに始まっているかもしれません。
東京都の城南地区で1970年代半ば竣工の5階建てマンションで築30年を過ぎた頃の出来事です。
ただ、居住者の大半は賃借人であり、又貸しによる事務所利用やウィークリーマンションとして使用されている状況でした。
建物全体で漏水事故が頻発しはじめ、共用部の給排水管に問題が見つかり、すぐにでも修理が必要になりました。
ところが、修理の発注者となる管理組合自体が機能していなかったのです

大規模修繕は1990年頃に行われただけで、その後の長期修繕計画はありませんでした。そこで、このマンションの数室を所有している男性が、自ら管理組合の理事となり、マンション管理業者に運営を委託。
この業者とともに長期修繕計画の策定や管理体制の見直し・修繕費の積み増しなどを行いました。
その結果、2012年にようやく「外壁の塗り直し」や「屋上の防水工事」を中心とした2回目の大規模修繕が実現したのです。結果、マンション内に秩序が戻り、「スラム化」という最悪の事態は免れたのです。

都市のスラム化