土壌汚染の恐怖


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大阪OAPマンション土壌汚染土壌汚染対策法に問題あり
大阪市北区の大阪アメニティパーク(OAP)内のマンションは1997年から販売が始まりましたが、2002年に土壌汚染問題が発覚。
2005年2月にマンション地下駐車場の壁に付着した「水あか」から、法定基準の22倍にあたるヒ素セレンが検出されました。三菱マテリアルは「口から摂取しなければ人体に害はない」と説明。
この土地は三菱金属(現、三菱マテリアル)の工場跡地を再開発したもので、大林組が土壌汚染対策工事を請け負いました。
2005年3月、OAPのマンションが重金属汚染を隠したまま販売された事件で、大阪府警生活経済課は、宅地建物取引業法違反(重要事項の不告知)容疑で、事業主の三菱地所の高木茂社長、当時社長だった三菱マテリアルの西川章会長など両社幹部ら計10人と、法人としての両社を書類送検した。
汚染は購入者に告げるべき重要事項で、職務権限のある社長らが公表などの対応をしないまま販売を続けたのは、組織的隠ぺいと判断したのです。
しかし2005年6月に大阪地方検察庁が不起訴処分としました。2005年8月、三菱地所など事業主と住民側は、事業主がマンション購入金額の最低25%を解決金として住民に支払うことなどを条件として和解することに合意。2006年6月、国土交通省と東京都はこの土壌汚染問題で、OAPのマンションを販売する際、敷地内でヒ素などの重金属による汚染が見つかり、対策工事を行っていたにもかかわらず、これを購入者に説明していなかったとして、三菱マテリアル、大林組三菱地所三菱地所住宅販売三菱マテリアル不動産に対して宅地建物取引業法による行政処分を下した。
三菱マテリアルには2週間、大林組には7日間にわたって、土地の売買や仲介など宅地建物取引業に関するすべての業務を停止するように命じました。
2016年大阪アメニティパークの南側に隣接する大阪市立北稜中学校の敷地から環境基準を超すセレンやヒ素が検出されました。
中学校の校舎建て替え工事中であるために除去工事を余儀なくされたとして、大阪市が三菱マテリアルに対して4,000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしたのです。
大阪市教委総務課は「現在係争中の裁判で市の主張を訴えていきたい」としています。

 豊洲移転問題等で土壌汚染が注目される機会が増えました。
2003年に施行された土壌汚染対策法の目的は、国民の健康を保護することであり、「健康リスク」の防止です。
土壌汚染の可能性が考えられる土地については、まずは土壌汚染があるかどうかの土壌調査をする「汚染把握」の義務が生じます。また、調査の結果、汚染があるということが判明したら、健康リスクがないように適切に「汚染管理」をする必要があるということで、その土地は区域指定されます。
つまり、土壌汚染法というのは、発覚した土壌汚染を完全除去しなさいという法律ではないのです。
環境省の土壌汚染に対する考え方は、健康被害がないように土壌を適切に管理すれば問題はないという、「健康リスク」を前提としたものです。
しかし一方、国土交通省を初めとするその他の省庁は、土壌汚染は土地の資産価値の減額要因になるという、「経済的リスク」を前提とした考えをとっています。
土壌汚染があると資産価値が低下してしまうので、不動産にとっては大きなダメージであると考えているのです。



多い土壌汚染住宅の下からゴミ
2016年の全国での主な土壌汚染の発覚した場所です。


兵庫県姫路市中央卸売市場移転予定地の出光興産製油所跡地から基準を超えるベンゼン、ヒ素を検出
岐阜県岐阜市岐阜大医学部付属病院跡地の駐車場建設用地から基準の1.2倍のヒ素を検出
高知県安芸市防腐剤工場跡地に整備した公園から基準の3.7倍のヒ素を検出
福岡県久留米市西鉄テクノサービス車両整備工場跡地から基準の超える鉛等を検出
愛知県岡崎市日清紡テキスタイル美合事業所工場跡地から基準の120倍の鉛を検出
福岡県福岡市九州大箱崎キャンパスの2号館跡地で基準の90倍の水銀を検出
愛知県瀬戸市陶磁器工場跡地から基準の113倍の鉛を検出
東京都江東区豊洲市場の地下で基準を上回るシアン化合物、ベンゼン、ヒ素を検出
石川県金沢市ホテル建設予定地から基準の53倍の鉛を検出

東京都内のある高級住宅地の広い空地で、ある業者が土の入れ替えを行なっていたのですが、その業者が掘り出したのは黒い色のゴミだったのです。
地盤の調査によると、ゴミの層は地下10m程ある可能性がありましたが、業者は3mほど彫り返しただけでした。
この一帯は1960年代に造成されたようです。一般の盛り土より柔らかいし、当然、地盤沈下の危険は多いにあります。このような宅地は見ただけでは判別できませんし、今後、多くの場所で見つかる可能性があります。
例えば東京都の築地移転問題でも、最初は地表だけの汚染調査でしたが、後から地中の粘土層までも汚染されていた事がわかりました。このように地表だけでの判断は禁物。
愛知県での出来事です。県は、1971年から土地を取得して造成を開始し、
1987年に県から土地を買い取ったURが、1988年から1989年にかけて戸建住宅を建てて販売。これが小牧市桃花台ニュータウンです。
しかし、その後道路に変化が現れ、住宅の外壁にもクラックが見られるようになりました。2001年2軒の住宅から苦情が寄せられ、調査したところ最大8.8cmの沈下が確認されました。
その土地を掘り返したら、なんと異臭を放すほどの油分を含む黒いゴミ状の物が出てきたのです。その後、住宅を購入した住民が県とURとを相手取り、損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴しました。
URの調査では、地下に元製紙工場の廃棄物が堆積した軟弱な層がある可能性が高いことなどが判明。
URは、「地盤沈下は、県による造成工事の不備が原因。このほか、県は造成する際に廃棄物を除去するための適切な措置を講じなかった」などとして、損害賠償を求め提訴。
2009年3月名古屋地裁は都市再生機構(UR)の訴えを退ける判決。URは、これを不服として控訴しました。
小牧市によれば、桃花台ニュータウンを含む同市東部丘陵地帯では、江戸時代後期から昭和中期にかけて亜炭の採掘が行われており、古い住民の間では「亜炭を掘っていた道筋では地盤が沈下する」とずっと以前からささやかれていたとも言われています。
ここも亜炭の採掘を終了後は、廃棄物の最終処分場に使われ、その後に愛知県が買い取って宅地開発が始められるに至ったのです。県が土地を買う時、或はURが住宅を建てる前に何故地盤調査を怠ったのでしょうか。



見えない隠れた瑕疵液状化の下から産廃
2000年10月、某不動産会社は、分譲マンションを建築する目的で、業者の媒介により、売主(鉄鋼業)から土地および建物(非鉄金属の保管用倉庫等)を買い受けました。なお、売買契約書には、土地に廃棄物、地中障害物または土壌汚染等の隠れた瑕疵がある場合に、土地の引渡し後6ヶ月を経過した時は、担保責任を追求できない旨の特約が付されていました。その後、不動産会社は、杭打ち工事を開始後、地中に建物のコンクリート基礎が埋没しているのを発見。2001年4月、地中障害物が発見されたこと等の報告書を作成し、媒介業者に提出。媒介業者は売主に、今後瑕疵担保責任の問題が発生する可能性について説明。その後も工事の進行とともに、コンクリート塊、コンクリート製のオイルタンクの残骸、配管が発見され、現場全体でオイル類により黒く汚染されて泥状になった土壌が見つかりました。
不動産会社と売主は汚染土壌の廃棄費用の負担について協議しましたが合意できなかったため、不動産会社は売主に対して、瑕疵担保責任に基づく損害賠償等を求めて提訴。売主としては地中埋設物の瑕疵は認めるが、土壌汚染については、環境基本法に基づく環境基準値を下回っており瑕疵ではないと反論。
また、受けた通知内容には土壌汚染の存在について一切触れておらず、引渡し後6ヶ月以内の通知はなかったとしました。
結果、裁判所の判断は、土壌汚染について瑕疵担保責任を認めました。理由としては、土地の土壌汚染は、多数の住民を迎え入れることになるマンションを建設することを妨げる程度に至っており、特別の費用をかけてでも処理する必要があるといわざるを得ない。不動産会社は売主に対し、特約の6ヶ月経過前に、地中障害物が存在したことおよびその範囲は建築物の基礎工事に必要な範囲全体に及ぶ可能性のあることを通知しており、この時点で、地中障害物全体の存在についての通知がなされたと認めるものとしたのです。
外見から通常予測され得る地盤の整備、改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は、宅地として通常有すべき性状を備えていないとして、土地の瑕疵に当たるとしています。
熊本県甲佐町の定住促進団地で、町の対策工事で掘削した地中から、産業廃棄物とみられるコンクリート片が出てきました。
場所は熊本地震で液状化で被害が出た所で、亀裂から砂が噴き出すなどして、1戸が全壊、14戸が大規模半壊、16戸が半壊しました。
2018年4月、町は、地下水を抜き液状化を防ぐ工事に着手したのです。町道の地下約3メートルに排水管を敷設するため掘ったところ、3カ所から長さ約2・1メートルのコンクリート片や直径約1メートルのなど約50個が見つかったのです。
この町は昔、至る所で砂利採取が行われていて、この採取場で働いてた男性によると、一帯は緑川に近く、大型重機で砂利を掘った穴は池になっていて、本来は土で埋め戻すべきだが、産廃が混ざった可能性を示唆していました。
甲佐町は、この団地を町の開発指導要綱に適合した「承認団地」として、開発した2業者に1社当たり1240万円の補助金を支出しました。
ただ、開発した業者というのは現町長の親族が務めており、2007年の初当選前年までは現町長が代表でした。住民の不安は募る思いです。

土壌汚染の恐怖-2 を参照して下さい