危険な擁壁


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建物の位置が問題石積擁壁
都会の中でも土地の高低差がある場合には擁壁を設けて建築物を建てる例は沢山見かけます。
が、しかし注意しなければならないのは、その建てる位置なのです。
下の図のように、擁壁からの離れや、擁壁の基礎からの角度による影響範囲において、建築物がある場合には問題が生じます。


下図のように擁壁に影響を与える範囲内に建築物が存在する場合、建物の荷重擁壁を倒す(崩壊)力になりうるのです。これは実際に起きている例です。

ですから、擁壁の影響を与える範囲内に建築物を建てる場合には、下図のように、基礎影響範囲の下まで下げる必要があります。
擁壁の上に建っている方は、今すぐにでも図面をチェックされたらいかかでしょうか。


現在よく見かける擁壁は「練り石積み工法」ですが、1975年以前は「空石積み」という、ただ石を積み上げた危険なものが多かったのです。それ以降だとしても過信は禁物です。無届や基準を無視したものも結構あるのです。
例えば擁壁の上か下の地盤にヒビが入っているとか、側溝にズレが生じているなどは問題あります。排水パイプから常に水が出ているようであれば、地下水がたまっている可能性があります。

1960年代には高級感がもてはやされた大谷石の擁壁がありますが、現在は耐力がないものとして扱われています。大谷石の擁壁は全国各地に現存し、風化により激しい大谷石の老朽化が進み、土圧に耐えられずに崩落する事例もあります。

擁壁にクラックが生じているものも見かけることもあります。その場合エポキシ樹脂を注入だけでは不安が残ります。最近は炭素繊維を巻き付ける補修方法もあります。まずは、専門家にチェックしてもらう必要があります。
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危険なブロック擁壁基礎地盤が危ない
問題なのは、下図のように擁壁の上にコンクリートブロック(CB)を積み重ねて擁壁替わりとしている例をよく見かけます。
CBは擁壁としての耐力はありませんし、下の擁壁の上にCB部分まで盛り土をしている訳ですから、根本的に下の擁壁の耐力の限界を遥かに超えている事になります。以前にCB擁壁が崩れ、上の住宅が傾く事故がありました。これは隣地の工事の振動が影響したと思われます。
まして、CB付近に木があれば、木の根によりCBが押される事になり、事故に繋がる危険性があるのです。




CB擁壁が木の根により膨らんだ状態の例を時々見かけますが、この場合には、擁壁の所有者は勿論の事、下に住んでいる人は注意を促すべきです。
擁壁は高さが2.0m未満であれば、役所に報告をする必要がないために、いい加減な施工をしている事がよくあるのです。2.0m以下だからといって、安心は出来ません。それがCB製であればもっと不安です。
擁壁の設置場所は、大体において道路、或は隣地境界線際に建てられますが、その部分の地盤を細かく調査しているでしょうか。たかが擁壁と甘く見てはいけません。

近年の地震後の調査において、擁壁等壁体構造物が、基礎地盤の支持力不足による、め
り込みと損傷により大きく地盤変位が生じ、建物被害を甚大化させた様子が多くうかがえます。
擁壁が崩れれば、それに伴い本体の建物にも大きな被害をもたらします。

擁壁などの壁体構造物の被害は丘陵地の盛り土部分、あるいは水路や川岸部を埋め立てた地盤で生じています。
基礎部分が以前どのような地盤であったかを良く知るべきなのです。

表層地盤をよく調査する事が必要です。
基礎の地盤が悪ければ、地盤改良も視野に入れなければなりません。




危険な擁壁ブロック塀調査の不備
2016年9月、埼玉県飯能市中藤下郷地区の民家脇のコンクリート製擁壁が台風16号などの雨の影響で崩落の危険が高まっているとして擁壁の上下に合計14棟に避難勧告を発令。
擁壁は高さ3メートル、長さ40~50メートルが民家側に傾いた状態。擁壁の全長は不明ですが、一部の擁壁が下方の民家に接触しているようです。
避難した13棟のうち、擁壁の上方にあるのは5棟で、下方には9棟があります。2017年5月時点でも復旧していないのです。
擁壁上部の駐車場も使えない状態が続いています。擁壁の整備は30年以上前と推定され、経年劣化が進んでいた可能性があります。
しかも当時の中藤下郷地区は都市計画区域外で、建築確認が不要でした。
東京都では土砂災害警戒区域と特別警戒区域を港区、新宿区、文京区、大田区、練馬区の5区で指定し、世田谷など3区でも指定しています。

北海道北広島市大曲並木3丁目地区では、2018年9月の北海道胆振東部地震により、大曲川沿いの擁壁の倒壊によって15戸が全壊する大事故が発生しました。実は、崩れた擁壁の下には、以前積まれていた間地石擁壁が見つかりました。崩れた擁壁は、昔の擁壁の上に新たに積まれていたのです。崩れるのは当然でした。現地では、地盤ごと約1.5m下に動いた住宅や地盤改良に用いていたコンクリート杭が損傷した住宅などが見つかりました。
2018年6月、大阪北部地震により、建築基準法の基準を超える高さのブロック塀が倒壊し、登校中だった小学生が亡くなるという事故が起きました。
それを受けて文部科学省がブロック塀に関する緊急点検を要請し、全国各地で調査が行われました。
横浜市では教育委員会がブロック塀の調査をPTAに依頼したのです、調査協力の名目で。調査を依頼された本人達は、建築の素人であるPTAが調査を行うことへの不安を感じていました。
大阪での死亡事故では、無資格の高槻市職員がブロック塀の点検を行っていたことなどが発覚。結局
2018年10月、高槻市の調査委員会は「設計・施工不良と腐食が倒壊の主因」とする最終報告書をまとめました。
横浜市教育委員会の見解は、目で見て判断できる範囲内で問題のあるブロック塀があるかどうかを知らせてほしいというものでした。専門的な知識は必要ないとのこと、該当するブロック塀が発見された場合には、横浜市の専門職員等が現場確認を行い、問題があると判断された際には改善指導を行っていく予定でした。
基本的にブロック塀の不備というのはその塀を所有する方が責任を有しています。
ただ、鉄筋の有無、モルタルの充填等を把握しているブロック塀保有者は稀です。又同じ事故を起こさぬよう、第三者の有資格者による検査に加え、補助金等も考えた、撤去、補修、あるいはアルミ塀への変更を推し進めるべきです。



危険な石積み擁壁崩落事故
兵庫県宝塚市南部の住宅街で、不動産会社のワールドターンが宝塚市の許可により2014年に土地の造成しました。
その土地を住宅会社の東栄住宅売却。一方宅地西側の法面部分は不動産会社のビッグウィンに売却。法面の下は1970年に施工された石積み擁壁でした。
その後ワールドターンによる宅地造成工事中、石積み擁壁にずれが生じていることに気付いた付近の住宅に住む住民2者と、法面下に土地を所有している者、合わせて3者が自宅の敷地に接する斜面地の安定性に不安を抱き3人で宝塚市やワールドターンなどを相手取って訴訟を起こしました。
2019年4月神戸地裁は、ずさんな審査で違法な宅地開発を許可した市に、対策を命じる判決を言い渡しました。
ただ判決内容は、許可基準への不適合は形式的な問題だとして崩壊の危険性は認めず、開発した事業者の法的な責任は否定したのです。
それに対して、住民と市の双方とも納得せず2019年5月、それぞれが控訴したのです。
2020年2月、神奈川県逗子市で道路脇の斜面が崩れ、歩いていた女子高生が土砂に巻き込まれ死亡しました。
その斜面の構造は、道路面から7m程の高さまでは石積擁壁ですが、その上は土の法面で高さは7~8m程あり、高い草が生い茂っている状態でした。
その上にはマンションが建っており、今回崩れたのは、土の法面が幅9m程が道路まで崩落したのです。
当時は雨でもなく、地震でもない状況での突然の崩落です。
なぜ崩れたかについては、専門家の調査によると、岩の風化によるものとの意見。問題は、事前に事故を防ぐ対策が無かった事です。
近所の人からは、見るからに危ないとの認識を持っていたようです。
石積擁壁の下までは、マンションの敷地内であり、土地所有者が事前対策をとる必要があるでしょう。
2020年3月国土交通省は、基盤岩の風化が原因とする調査結果を発表しました。

ブロック塀倒壊事故は 建物に潜む危険な事故