欠陥建物事例ー2

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危険な階数水増し施工ミス
2008年5月、大阪の不動産管理会社「ユービー」が所有・管理するマンションで階数水増し問題が明かになりました。
水増しとは、行政への建築確認申請時には10階建てにも関わらず、工事が終わったら、11、12階の建物が出来ている事。これは、工事が終わっても、行政による完了検査を受けていないからです。
また大阪府池田市で、2012年8月竣工したワンルームマンションの完了検査において、違法な建て増しが発覚。建築申請では7階としていたものを9階にし、容積率の限度を超えていました。
建物の内容も、ワンルーム24戸でしたが、仲介サイトでの募集要項では3LDKや2SLDKなど、計画にない住居も掲載されていたのです。
当初の所有者は竣工から1年以内に別の人物へと売却し、その後、2015年10月までに兵庫県に住む女性へと売却済でした。
池田市は2013年8月に男性に対して建築基準法に基づく是正を命じ、男性もこれを認めたものの、改築しないまま売却、そして2015年10月に、現在の所有者に対して正確な図面の提出を求めるとともに、是正命令を出しましたたが、女性は経済的に取り壊しは難しいとして、改善に取り組む気配を見せなかったのです。
入居者からは「このまま住んで問題ないのか」など不安の声があがりました。
ある行政の発表によると、完了検査を受けているのは申請件数の約10%程だというのです。基本的には、一戸建ての検査未完が多いのです。
完了検査を受けていない場合には、構造体の施工にも疑問が残ります。それに階数を上乗せしていれば、耐重圧、耐震性も心配なところです。
ところが、東京都内を歩いていると、上乗せが明らかである建物をたまに見る事があります。又、屋上に、プレハブの建物が増築されているものは、結構見かけます。現在の建築行政のいい加減さが表面化しているのです。

2010年3月に竣工した、JR大阪駅付近の21階建てビルについて、3階部分の鉄骨1本が設計図と比べて水平方向に約7センチずれていたことが2010年12月に判明。

施工中の計測ミスによって生じたもので、現場の建築事務所長らが当時確認していましたが、工事は続行された。建築事務所長らはズレについて会社に報告していなかったといいます。施工はスーパーゼネコンの鹿島建設。

情報源としては、インターネット上に鉄骨の問題を指摘する書き込みがあった模様です。

2014年3月、神奈川県川崎市内で建設中の超高層マンション「パークタワー新川崎」で、4階部分の柱と梁の一部にひびや剥離が見つかったことから、不具合のある部分などを解体・撤去し、再施工する事になりました。

事業主は、三井不動産や三井不動産レジデンシャル、近隣地権者らが出資する鹿島田駅西部地区再開発で、施工は清水建設により2012年8月に着工。

不具合は、4階の柱と梁の一部にひびと剥離が発生していたのです。原因としては、4階部分の柱と柱の接合部に充填剤を注入しないまま、5階と6階、7階の一部の施工を進めたため、4階柱の一部に許容を超えた荷重がかかったことが原因のようです。

今回は、販売の受け付けはしていなかったのは幸いだったでしょう。



基礎に気を付けろ認定不適合コンクリート
2011年8月、仙台市青葉区のマンション管理組合が、建物を設計、施工販売した矢作建設工業と矢作地所などを相手に、建て替え費用などあわせて12億5100万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしました。
マンションは、鉄筋コンクリート造の地下1階、地上10階建て。2002年3月に完成し、35世帯が入居。2011年3月の地震によって建物全体が南側に約1度傾き、南北方向の界壁に貫通ひび割れなどが発生。震災後も住み続け、平衡機能障害を訴える住民もいるのです。
丘陵地の斜面の中腹に建つマンションは、地震の揺れで、敷地南側の地盤が標高の高い東側から低い西側へと動く地滑りが発生し、建物は足元がすくわれて南側に傾きました。
そこで住民は、地滑りが起こりやすい傾斜地だったにもかかわらず、ベタ基礎を採用した設計者らに責任があるとしたのです。
施工側は震災後、「構造計算上はこのような地盤変動を考慮しておらず、天災被害だ」と住民に説明。
ただ、同じ斜面に隣接して建つほぼ同時期に完成したマンションは杭基礎を採用しているため、震災による被害がほとんどなかったことを訴えます。
日本建築学会の建築基礎構造設計指針では、敷地が傾斜地の場合、斜面の崩壊や変状の可能性について事前に評価、検討するよう規定。そのうえで、傾斜地特有の地形や地盤の状況に適合する基礎形式を選ぶよう求めていて、それぞれ設計者の判断に任されているのが実情なのです。
1995年に起こった阪神・淡路大震災などでも、丘陵地の斜面に造成した住宅地で地滑りが相次いで発生し、谷埋め盛り土の危険性に対して社会的な関心が集まりました。
2010年9月国土交通省は、大臣認定仕様に適合しない高強度コンクリートが約30物件に使用された恐れがあると発表しています。また、宇部三菱セメントのコンクリートの一部が、建築基準法で求められる大臣認定仕様に適合しないとも発表したのです。高強度コンクリートは、特殊なもので超高層などにに利用される製品です。

他の報道によると、東京・埼玉・神奈川の建物計90棟で使用され、物件名は非公表ですが施工業者の大半はスーパーゼネコンで、都心近郊のタワーマンションなどが該当すると見られています。

この高強度コンクリート問題について専門家は、JIS規格に定める基準値を満たすものや、他の同種のコンクリートの大臣認定の事例があること、また当該コンクリートの強度試験の結果などから、いずれも強度その他の性能には支障がないとの所見を発表しています。

建築基準法第37条の規定により、建築物の基礎、柱、はり等に使用するコンクリートは、JIS規格に適合するもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを使用することとしています。

ですから、建築違反建物の疑いは消しきれませんし、実際の数値を確認しているかは、不明なのです。ただ、初期の高強度コンクリートには、「耐火性」が問題になっています。

火事の怖い現実ーコンクリートの爆裂を参照



杭の欠陥マンション続・杭の欠陥マンション
住友不動産が2003年に分譲した横浜市内のマンション「パークシティ横浜」の管理組合が全5棟を、2013年4月ごろに大規模修繕に当たって建物を調査しました。
ところがB南棟と隣接するB東棟とをつなぐ渡り廊下の手すりがずれていたり、B南棟の一部の梁にクラックが生じていたりが見つかり、建物が傾いている現象が見受けられました。
そこで住友不動産と設計・施工者の熊谷組に問い合わせた所、「問題ない」との回答がありましたので、第三者の建築士に調査を依頼。
古地図などを調べたところ、B南棟の敷地の一部が造成前は谷地だったことが分かりました。
施工記録にを見ると、基礎杭の設計長が造成前の谷地の地表にも届いていない様子なので、ボーリング調査を実施した結果、基礎杭が支持層に到達していないことが判明。
管理組合は、建築確認申請を受け付けたのは指定確認検査機関の日本ERIでしたが、調査結果を横浜市に報告。
調査に当たった横浜市は、構造耐力に関して規定した建築基準法に違反していると判断し、マンションの管理組合に対して、建物を適法状態に是正するように行政指導。
建物の地上部であれば、補修・補強工事によって、安全性を確保することが可能ですが、杭を補修・補強する工事は、地面の下の作業になるため実施は極めて難しくなります。
その後の調査で3棟から合計10本の杭が支持層に届いていないことが判明しました。また、施工者の熊谷組は建物が施工中から傾斜していた可能性が高いことを知っていたのです。
既に一部の棟では全住戸の仮住まいの転居先が決定した時点で住友不動産は、住民の希望者に買い取りに応じると発表。
さらに2014年10月、B南棟を建て替える方針を明らかにしました。しかし、2016年2月、残る棟の基礎部分で23カ所の鉄筋切断や、別の23カ所で必要な補強鉄筋が入っていない疑いがあることも判明。
2016年3月、住友不動産は住民向け説明会を開き、全5棟の建て替えを正式に提案。施工した熊谷組も、今回の問題に対して陳謝し、建て替え工事も担当したいと理解を求めました。慰謝料は世帯あたり200万円との提案も。
2015年10月「パークシティ横浜」で、基礎杭が支持層に達していない施工データの改ざんが発覚した問題では、杭473本のうち、8本が必要な深さまで打たれていない事が判明。こうした改ざんは全4棟のマンションのうち3棟に及んでいたのです。
問題の杭の施工を請け負った旭化成建材の実態も露呈。そして住民は転居し、4棟のマンションは建て替え工事が進んでいます。
一方で、建て替え費用の負担をめぐり、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設は裁判へともつれ込んでいます。
対立の原因は、傾斜が確認されていない3棟まで建て替えとなった事なのです。
三井住友建設およびその下請けの日立ハイテクノロジーズと旭化成建材は、傾斜発覚後、施工不良を認め謝罪。
マンション全4棟のうち、傾斜が確認された1棟の改修費を全額負担するほか、残る3棟にも不具合があれば工事を行う意向を示しました。
しかし、3棟の安全性や資産価値下落を懸念する声に押された三井不動産レジデンシャルが、2015年10月に全棟建て替えを住民に提案。翌2016年9月に住民らが集会にて全棟建替えを決議
2017年11月、意見の相違が明らかになったことから、三井不動産レジデンシャルがマンション4棟の建て替え費用の支払いを求めて、東京地方裁判所に訴えを起こしました。
訴えの内容は、建て替えに伴う費用約460億円及びその金利負担を三井住友建設、日立ハイテクノロジーズ、旭化成建材に請求しているのです。
三井不動産レジデンシャルは、過去に施工不良マンションで争われた裁判例をもちだしました。竣工後にひび割れや手すりのたわみ、配水管の亀裂などが生じたマンションについて、最高裁判所は2007年7月、「建物の建築に携わる施工者は、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う」と判示した例。
このマンションは2007年の竣工ですが、その後、法改正により規定に適合しない建物(既存不適格)となったのです。既存不適格の建物を改築するには、現行法に適合させる工事も同時に必要になります。
マンション4棟のうち傾斜が確認されたのは1棟ですが、4棟は渡り廊下でつながっているため、建築基準法で4棟全部を1棟と見なされます。つまり傾斜した1棟に手を加えようとするなら、その他の3棟についても工事が必要なのです。さらに特殊な吹き抜けを持つこのマンションは、消防法上避難経路が確保しにくく、火災の熱を逃がしづらい構造とされ、全住戸にスプリンクラーの設置が必要となり、全705戸もの大規模な配管工事をするには、住民の一時転居が必要になりました。

欠陥建物事例ー1
欠陥建物事例ー3
欠陥建物事例ー4 
も参照して下さい