欠陥建物事例ー1


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鉄筋不足超高層マンション 1鉄筋不足超高層マンション 2
2007年11月、千葉県市川市のJR市川駅前に建設中の超高層マンションザ・タワーズ・ウエスト プレミアレジデンス」(地上45階建て)の建築中の現場で、設計上必要な鉄筋128本が不足しているミスが見つかった。
施工はスーパーゼネコンの清水建設など5社で構成する共同企業体です。
建設現場では、担当者らが常駐し、各階ごとに写真を撮るなどしてチェックしていたが、全員がミスに気付かなかった
普通チェックは、施工担当者が行ない、その後、設計監理者(今回は日本最大手の日建設計)により2重チェックとなりますが、同じ場所で数階単位で見逃すとは、問題ありです。
実際現場では、設計監理者によって鉄筋不足が見つかる事は、ままあるのです。
阪神大震災では、ゼネコンが施工したビルが壊れ、それにより欠陥が明らかになった例もありました。この場合ゼネコンが保証しています。
しかもこの場合、住宅性能表示制度を利用していなければ、さらに発見が遅れるか、或は見逃したまま完成となった可能性さえありました。この住宅性能表示制度利用は任意ですが、手数料もかかるため、2006年度の利用は新築着工件数の20%未満でした。
この後打設済みの鉄筋コンクリート柱に鉄筋を追加する補修工事を実施し、国土交通大臣の認定を取得し直すなどして工事を進め09年1月31日に竣工しました。ここでは契約済みの顧客に対して解約に応じ76件の解約があったもようです。
2007年11月左記の件から1週間後、今度はスーパーゼネコンの竹中工務店で、施工中の超高層マンションで使用していた鉄筋が強度不足であった事がわかりました。この物件では、強度不足鉄筋が使用されていた上層階を解体してやり直す事になりそうです。
またこのマンションは06年1月、既存ビル解体時に出たアスベスト建材を無届で回収していたのです。(アスベスト回収時は届出が必要です)
そして2008年2月、国土交通省九州地方整備局の発表によると、竹中工務店は宮崎市内の鉄骨鉄筋コンクリート造、地上7階の法務総合庁舎新築工事で、柱の鉄筋本数と、鉄筋の仕様、鉄骨柱の厚さ間違えて施工していました。
九州地方整備局としては、「設計よりも強度の高い鉄筋が入ったことで、構造のバランスが崩れて、地震時にかえってせん断破壊する恐れが大きくなった部位もある」と設計と違う仕様は問題ありと説明しています。 現時点では、施工ミスを解消する補修工事をすでに始めています。竹中工務店には行政処分を下すことを検討していて又、監理者の建築事務所にも、施工ミスを見逃したことで処分を下す可能性があります。
耐震偽装は名の無い人達による下請け仕事だけのような印象でしたが、ここに来て、一流会社神話が崩れて行く時代に突入した様相です。ただ、建築を知る人間からしてみれば、一流の名は関係無い事は前からわかっていた事です。
08:30

鉄筋不足超高層マンション 3鉄筋切断マンション
滋賀県彦根市では、2006年10月、20階建てマンションの施工中、床の鉄筋が設計よりも少ないことが判明。ただ、現状の鉄筋量で再計算したところ、設計で想定した強度は満たさないものの、建築基準法が求める強度はクリアしていたようです。
2014年3月、東京都港区に建設中の超高層マンションにおいて、鉄筋が足りないまま鉄筋コンクリート柱が打設されていたことが判明。
発注は積水ハウスで、設計・施工を大成建設が担当している「グランドメゾン白金の杜 ザ・タワー」。
問題になったのは、地下に設置したRC柱。積水ハウス広報部によれば、計34本あるRC柱のうち19本で、主筋を固定する補強筋(拘束筋)の一部が設置されないままコンクリートが打設されていたのです。
2月に大成建設が不具合に気付き、その翌日に積水ハウスに報告。大成建設は2月下旬から柱のコンクリートをはつって補強筋を設置し、再打設する作業を行いました。積水ハウス広報部によれば、手直しの工事は4月上旬に完了。
ただ、なぜ拘束筋が不足したまま打設されたのかは不明のままです。
2008年3月、東武建設が施工した長野県佐久市内のマンションで鉄筋の一部を切断し、そのまま竣工していた事を長野県が発表しました。

換気設備用のスリーブの穴開けを忘れコンクリート打設後に、梁の多くに穴を開けるためコア抜きをした。その際鉄筋の一部を切断し、そのままコンクリートを埋めて竣工させたものです。 コンクリート打設後に開けたスリーブ穴は55カ所にのぼります。

50歳代のベテラン現場監督ですが、うっかりしていたり、監理者などとの意思疎通がうまくできなかったりしてミスを犯したようです。なお、設計・監理は東京渋谷の設計事務所が担当でした。

長野県は2008年2月、販売会社に対して販売の中止と購入者への状況説明、および施工状況の詳細な検査などを要請しました。その後同社は売買契約を解除し、2008年4月時点で販売会社は、解体する意向を県に申し出ています。
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強度不足マンション床のたわみは設計変更が原因
2008年11月大阪市豊中市にある竹中工務店が施工中の50階建て高層マンションで、柱の接合部が突然、圧壊する事故が発生しました。

19階の柱1本の接合部が圧壊して、1~2mmほど真下にずれ、8~21階の柱と梁が交差する計8カ所に幅0.05mmほどのひび割れが生じました。

原因は、PCa柱の接合部のすき間にグラウト材を充てんしていなかったことによります。これは、施工の安定性を高めるための作業手順の変更が、ミスを誘発したようです。事故後、竹中工務店は大臣認定や建築確認を取り直して補修中。


また、2001年に竣工した兵庫県姫路市内の分譲マンションが、施工不良のため耐震強度不足になっていたと、2008年5月国土交通省が発表しました。
設計図通りなら耐震性は十分確保されていたのですが、施工不良のため耐震性不足になっていたのです。問題は 地震の揺れを吸収するために躯体の接合部に設けるべき構造スリットというすき間の一部を、雨漏りを恐れたことにより施工していませんでした。
1998年に竣工した大阪府茨木市内の分譲マンションで入居後間もなく室内建具の不具合、床置き家具の傾き、壁のクラックなど多数の住戸で問題が発生。2001年からは、キッチンを外しフローリングの貼り直しをする住戸もいて、2002年には補修のため仮移転する人も出て来ました。
この年、事業者代表である阪急不動産が調査すると、床は最大で48mmものたわみがあるため、フローリングに不具合出る事が明らかになりました。
原因は、原設計ではPC鋼線を入れてたわみを防止する「PCアンボンド」ですが、そのスラブ厚さ200mmは変えずに、在来工法により床を施工したことであり、この方法だと「たわみ」は発生可能との調査結果が出ました。
2002年、阪急不動産と施工者の大林組は住民に必要な対策を約束しましたが、この時点で用途地域が確認申請の時より変更されており、同じ形での建て直しが出来なくなっていました。
2003年、管理組合は事業者との間で、スラブのたわみを補修するなどの協定を締結。全166世帯のうち164世帯が同意しましたが、2世帯は同意せず、スラブの再構築を行わないのは契約解除に値するなどとして2004年3月、事業者、施工者、設計者に対して、大阪地裁に提訴。
その理由として、阪神大震災から2年後であり、マンションのパンフレットには、構造へのこだわりがアピールされていたなどかあり、責任を追及しないと気がすまなかったようです。
一方、協定に同意した164世帯のうち7戸の調査をさらに進めたところ、床スラブが50mm以上たわんでいる個所があることがわかりました。
また、耐力壁に空洞が存在する、排水管を設置するために床スラブが2cm削られている、コンクリートにジャンカや異物混入が認められる、或は垂直打ち継ぎ部分の両側のコンクリートが一体化していない、などの施工不良が新たに判明したため、164世帯のうちの18世帯が新たに提訴に踏み切ったのです。
大阪地方裁判所は2008年1月、購入者の請求を退ける判決を下しました。主な争点は、工法の変更で引き渡し後に床スラブのたわみが生じることを、事業者など7社が予見していたかどうかでした。大阪地裁は大林組について「スーパーゼネコンといわれる立場にあったとしても予見は困難」と判断、ほかの6社に関しても予見の可能性を認めなかったのです。
 



大臣認定偽装問題マンション確認取り消し事件
建物に使用する建材において、メーカーが製造したものについては、国土交通大臣の認定が必要です。ただ、この大臣認定制度に関する不正は後を絶ちません。
2007年にニチアスが耐火間仕切り壁などで大臣認定の不正受験を公表した後、2015年には、ビルの地震時の建物の揺れを抑制する免振装置に取り付けるゴムの大臣認定を取得する際に東洋ゴム工業は、不正を働きました。この後、違反した免震材料の交換に関する費用を全て賠償することになっています。
その後も樹脂サッシや不燃木材などさまざまな材料で大臣認定偽装が発覚しています。
なかには、不正サンプルを試験の実施機関に持ち込んで偽装するケースもありました。
エレベーターでは、日立製作所や東芝エレベータなどで大臣認定に適合しない事例が出てきました。戸開き走行保護装置と呼ぶ安全装置で、認定に適合しないものを設置していました。
この大臣認定制度については、抜本的な見直しが必要な時期を迎えているのです。
2012年、都市居住評価センターが建築確認を下ろした、東京都文京区小石川の分譲マンションが建築途中に、周辺住民の請求を受けた東京都建築審査会によって、避難階の判断により2015年11月に取り消されました。
「ル・サンク小石川後楽園」事件です。
2015年4月に完売し、2016年2月竣工予定の、総戸数107戸、地下2階・地上8階の鉄筋コンクリート造の建物です。
その建築主の申請に対し、文京区長が開発許可を出すたびに、近隣住民が反対の声を上げるという構図が10年にわたって続いていました。
実は、このマンションが建築確認を取り消されたのは今回が初めてではありません。2005年にも都審査会が「自動車車庫出入り口に面する道路幅員が6mに満たない」などの理由で確認取り消しています。ただ、建物は完成間近で、全107戸が完売していたのです。
そして東京地方裁判所は2018年5月、完成間近だった分譲マンションの建築確認を取り消した判断は適法であったとの判決を下し、都審査会の処分を不服とする建築主の訴えを棄却。2018年12月、建築主の建築確認取り消しの「取り消し処分」を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高等裁判所は控訴を棄却したのです。
文京区はマンション建設中の14年3月に高さ制限を変更。当該マンションの周辺地域は高さ制限22mの高度地区に指定されました。つまり、建築主が都審査会の処分を受け入れて建築確認を再申請すれば、高さ27mの当該マンションは上層階の2階分を減築する必要があります。他は、既存建物を解体したうえで新たに建て直すか、計画自体を白紙に戻すしかなくなり、事業者、建築主共、引くに引けない状況となり、都に対する訴訟を決断したという経緯があります。
国内では年間に100件ほど建築確認の審査請求がなされています。そのうち約1割ほどが建築確認を取り消されていますが、ほぼ躯体が出来上がって簡単に直せない建物の建築確認の取り消しはまれなのです。
2014年6月の改正を受けて、不服のある者は建築審査会を通さなくても裁判所に提訴できるようになったため、強権発動とも取れる都審査会の裁決が行われたと解釈できます。

欠陥建物事例ー2欠陥建物事例ー3 
欠陥建物事例ー4 も参照して下さい