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日照被害 | 受忍限度を超えない例 | |||
現代の都市においては、色々な環境問題が表面化して来ていますが、とりわけ身近な問題としてよく取り上げられるのが、建物の日影の問題でしょう。これはある日突然関ってくることがあります。 ここに、ある住宅の例を揚げます。 都内において、Aの南側にBが3階建ての木造住宅を建てたところ、Aは日照権としてBを訴え東京地裁はBに慰謝料と建物の北側斜線を超える部分の撤去を命ずる判決を下しました。 建物は北側斜線を1.0m以上もはみ出しており、以前Aが区に対して工事の中止を陳情に行き、それを受けて区は度々Bに対して工事中止の要請を行った模様でしたが、結局建ってしまいました。 これに対して逆の例もあります。 前例と同じような設定です。北側斜線に対して60cm程違反するもであったために、近隣の住民達は日照被害を根拠に損害賠償を裁判所に請求しました。 しかし東京高裁は近隣住民に対して請求の却下を下したのです。 チョット不思議な感じですが、理由としては近隣の住宅に対して日照の被害は少なく「受忍限度」を超えないと判断されたようです。 建築以外の例もあります。 Aが2階建ての住宅を新築し、隣のBに対してプライバシーを考慮して境界線に1.6mの塀を造りました。しかしBはそれではプライバシーが守られないとして、境界線に16mもの長さで高いところで5.5mもの金属製のフェンスを設置したのです。 それによりAの部屋は暗くなり日中でも電気をつける始末となり、採光、通風などを阻害されたとして、Bにフェンスの撤去と慰謝料を請求し、裁判所はフェンスの2mを超える部分の撤去をBに命じました。 内容としてはAの「受忍限度」を超えると判断されたようです。 | 大阪のあるマンションの1階に住むAは、2000年に購入し家族と暮らしていました。その南側の敷地にはB所有の木造2階建の建物がありましたが、2004年それを解体してアパートを建てました。 Aはそのアパートにより冬、日当りが悪くなり日照権を違法に侵害されたとして、慰謝料等の支払いを求め訴訟を起こしました。 2005年大阪地裁の判断として、Bは建築基準法等に違反していない上、Aはあえて1階を購入しているものであり、また、日照妨害の程度は軽微で、受忍限度を超えるものではないとしました。 その内容としてAは、マンションの1階部分の日当たりが悪いものであることを承知で、マンションの2階ではなく、1階を購入したものであり、日照がかなり制限されていることを認識・認容していた。 また、早晩、従前建物の外観からして従前建物の建て替えがあることも予測の範囲内であったというべきであるとも。 さらに、アパートが第一種中高層住居専用地域の日影規制を受けないものである上、仮にその日影規制を受けると仮定した場合でも、その日影規制の範囲内の建物であること等をも考慮したのです。 今回の場合、日照侵害は認めながら、建築基準法、日照被害の程度、地域性等を考慮し、受忍限度は超えていないとされました。 | |||
日影規制の裁判 | 建築確認の取り消し | |||
埼玉県さいたま市大宮区で建設中の事務所ビルの建築確認の認可の取り消しを、指定確認検査機関を相手取って求めていた裁判で2014年3月、さいたま地方裁判所は建築確認を無効とする判決を下しました。 内容は、建築基準法の日影規制における算定方法を巡っての解釈についての争いでした。敷地が道路などに接する場合、敷地境界線の緩和がみとめられており、それには「閉鎖方式」と「発散方式」があります。 「発散方式」ですと、建てる側は有利になります。今回の例では、自宅に日陰ができるなどと主張している周辺住民側は、日陰の許容範囲が広がることになり、建築基準法などに照らして違法であると主張しました。 検査機関は「発散方式」は、全国20の政令指定都市で運用上の適用を認められており、さいたま市の担当課から発散方式を適用しても支障がないとの回答を得たうえで、建築確認を下ろしていると、主張。 それに対して裁判所は、実務で多く採用されているからといって、法解釈として適切であるとも言えない、としたのです。 ちなみに、国土交通省市街地建築課の担当者は、「発散方式は条文の解釈によるもので、違法に当たるとは認識していない」と説明しています。 ただし今後は、「発散方式」を否定したさいたま地裁の判例は、全国的な影響を発揮するものと思われます。 | 名古屋市瑞穂区に建設中のマンションを巡り、近隣住民8人が確認
の取り消しを求めて2009年12月に審査請求していた問題で、2010年4月名古屋市建築審査会は、日照権の侵害に当たるとして、建築確認を取り消す裁決を下しました。 民間審査機関の、ビューローベリタスジャパンから建築確認を取得していた内容を建築審査会が調べたところ、日影図に記載された測定点の緯度が誤っていることが判明。 そこで建て主は、正しい測定点の緯度と、その緯度に応じた影倍率を記載し、「軽微な変更」として書類を差し替えました。 しかし、測定点を改めると日影規制を満 たさなくなり、日影平均地盤面を実際に算定した寸法に改めました。このほか、建築基準法で定められている隣地高低差緩和の規定を用いて、日影規制をクリアしたのです。 しかし、この審査請求で取り消しが求められているのは、2009年9月に下された建築確認です。その際、適法に建築確認が下されたかを判断すべきであるとして、建築確認取り消しの裁決を下しました。 検査機関を役所から民間に移行したことによる、検査の審査の甘さが目立ちます。 | |||
08:30 |
太陽光発電トラブル | 日照権異例の判決 | ||||
神戸市元町5丁目商店街の経費で大きな負担となっているのが、月額30万円ほど掛かるアーケードの照明の電気代でした。そこで商店街は2004年、アーケード上に1.2m×0.8mの太陽光発電パネルを237枚、計31.28kW分、取り付けました。 その結果 年間発電量は約2万 7500kWh、年間で50万円ほど照明の電気代が安くなったのです。設置工事などに要した事業費は2100万円。そのうち半分を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金で賄い、商店街が負担した事業 費1050万円を約20年で回収できる計算でした。 ところが2006年、アーケードの南側に面して14階建ての分譲マンションが完成。その結果、地上3、4階の高さにあるアーケード上の太陽光発電パネルにマンションの影が落ち、発電量が約25%も低下。 パネルを設置した区間は約240m。一方、マンションの間口は約24m。それでも長く伸びるマンションの影が発電量の低下に及ぼす影響は小さく なかったのです。 商店街には『景観形成市民協定』があったので 「太陽光発電協力金」の支払いを要請。マンションの日影面積が発電量の低下に及ぼす影響を計算したう えで、建物の間口1m当たり月額460円を負担してもらうことに決定。この分譲マンションの場合、1棟で月額1万1000円を商店街に払うよう求めました。 マンションの購入者も商店街も同じ地域の一員になり、対立するのは望ましくないと考え、協力金がさほど高くなかったこともあって合意。業者は1戸当たり月額200円を管理費に含めて負担してもらうことを購入者に説明したうえで販売。購入者から抵抗 はなかったといいます。 | 兵庫県尼崎市内で8階建て20戸+店舗のマンションの住民が、隣接する南側に26戸のマンションが建つ事に対して、2009年11月「敷地境界から60cmの位置に14階建てのマンションが建設されれば、南側を完全にふさがれ、冬至の日照時間が大幅に減少し、受忍限度を超える」と訴え、神戸地裁に建築差し止めを申し立てました。 ただこの地域は日影規制のない近隣商業地域にあり、周辺には6~10階建てのマンションも建っています。 事業主の不動産会社は、2010年3月神戸地裁に保全意義申し立てをしました。事業主は、東西のバルコニーをやめるなどの日照の妨げには配慮したので、建築差し止めには応じられない、と反論したのです。 しかし神戸地裁は2010年2月、以下の理由から10階以上の部分について建築差し止めを命じました。 「建築基準法の日影規制は最低の基準を定めたものだ。日影規制のない地域である事は勘案すべき要素であるが、具体的な事情を考慮して判断すべき。マンションは利益を追求する分譲施設だ。日影規制のない地域であるからと言って近隣住民の権利を侵害していないとすることは許されない。8階建てのマンションが建設されても冬至の日影時間が4時間未満ですむ住戸がある。10階建てだと一部住戸の全居室で4時間を超える。したがって10階以上の部分の建築工事続行を禁止する。」 敷地は日影規制のない近隣商業地域にあり、日照権の侵害を理由に建築の差し止めが認められるのは異例です。 この司法の判断には少し疑問が残ります。マンションは利益追求の施設と言いますが、訴えた側も同じ施設であり、訴えた側の北にも住民は住んでいるのです。 |
日照権トラブル-2 も参照してください