活火山


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火山の活発化ー1白根山の噴火
歴史の記録が残る時代からある江戸時代以降19世紀まで、1回の噴火で数億立方メートル以上の噴出物を出すような大噴火が各世紀に4回以上起こっていました。
ところが、20世紀に入ると1914年の桜島の大正噴火、1929年の北海道駒ケ岳噴火の2回だけで、それ以降100年近く、大きな噴火は起こっていません。
3.11の東北地方太平洋沖地震は、869年の貞観地震と場所も大きさもほぼ同じであったことが指摘されています。2004年、2007年には中越地震や中越沖地震、2011年には信越地方で地震が起きましたが、9世紀後半にも中越や羽越、信越などで地震が起こっています。
最近の地震の起こり方は9世紀後半によく似ているといわれています。そして9世紀には貞観地震の18年後に南海トラフで大地震が起こっています。よって、これから数十年以内に南海トラフでの大地震が起こる確率が高まっているとされています。
2018年1月、群馬県にある草津白根山が噴火。午前中、地盤の変動を伴う振幅の大きな火山性微動が観測され、本白根山の鏡池付近の火口から1キロ以上離れた場所まで噴石が飛んだことが確認されました。気象庁は噴火警戒レベルを「入山規制」を示すレベル3に引き上げました。
警察と消防によりますと、噴火による噴石や同じころ近くのスキー場で起きた雪崩で訓練中の自衛隊員1人が死亡し、
けが人は11人です。
草津白根火山観測所の野上教授は、噴火口が少なくとも2カ所あるとの見方を示しました。現場には直径1メートルの大きな噴石もあったという。
また、産業技術総合研究所や火山研究者は、マグマの噴出を伴わない水蒸気爆発の可能性が高いとの分析結果を明らかにしました。
防災科学技術研究所によると、降灰は火口周辺から北東に7~8キロ、幅は2キロ以上に及びましt。
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火山の活発化ー2新燃岳の再噴火
貞観地震より前ですが、864年には富士山で史上最大規模の貞観噴火が起こっています。青木ケ原の樹海はこの時の溶岩の上に樹木が生い茂ってできたものです。さらには、この9世紀後半には鳥海山や新潟焼山でも噴火が起こっています。
そしてその前後には、伊豆諸島でも1000年に1回程度しか噴火しない新島や神津島が大噴火し、伊豆大島、三宅島でも大きな噴火が起こっています。
また、九州の阿蘇山や鶴見岳、開聞岳が噴火したのもこの9世紀後半。まさに、大地動乱の時代でした。最近の地震の起こり方がこの時代に大変よく似ていることを考えると、当時と同じように、今後、火山活動も活発化することは当然考えられます。現に2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、火山活動が活発化しています。
霧島連山の新燃岳は2018年3月1日に噴火し、6日午後2時半ごろ、2011年3月1日以来約7年ぶりの爆発的噴火を起こしました。
噴煙の高さは2000メートルを超え、さらに風向きの影響で火口の南西に広がる鹿児島県霧島市を中心に、温泉地や農園に灰が降りました。断続的に鳴り響く噴火音もあがり、観光や農作物への被害を心配する声が上がりました。
1月23日に元白根山が噴火したばかりですが、2017年に起きたアリューシャン列島の地震、2018年のペルー地震など、環太平洋火山帯での火山活動が連動しているかのような連想をさせられます。
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火山の活発化ー3富士山の不安
東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9.0の巨大地震の後、関東から九州まで少なくとも13の活火山の周辺で地震が活発になったことが分かりました。
地震が増えた活火山は、関東や中部地方の日光白根山、焼岳、乗鞍岳、富士山、箱根山。伊豆諸島の伊豆大島、新島、神津島。九州の鶴見岳・伽藍岳、阿蘇山、九重山。南西諸島の中之島、諏訪之瀬島。
富士山の近くでは、2011年3月15日にM6.4の地震が起き、その後も余震活動が続きました。焼岳では山頂から半径5キロ以内で通常の1カ月に数回の地震が、1週間で約350回以上に増加。箱根山周辺では通常の1日2回程度の地震が、1週間で1050回ありました。
過去には巨大地震後に火山が噴火した例もあります。東海、東南海、南海地震が連動した1707年の宝永地震(M8.4)の49日後に、富士山が大噴火を起こした例。
2004年のスマトラ沖地震(M9.1)では、地震後の数カ月間に周辺の10以上の火山で地震が活発化、1年4カ月後にはインドネシア・ジャワ島のメラピ山が噴火しました。
富士山は、溶岩や火山灰が何層にも重なった「成層火山」です。約5000年に一度の割合で、上部の層あ崩落する「山体崩壊」が起きています。2900年前に起きた山体崩壊では、静岡県御殿場市を直撃し、静岡県沼津市や神奈川県小田原市周辺まで覆ったとされています。
富士山の火山活動は、文学や歴史書にも表れています。「竹取物語」「万葉集」「新古今和歌集」などに描かれています。近年で最大規模の噴火は、864年貞観噴火、2番目は1707年宝永噴火です。
最近では、2000年の秋、地下5~15キロにかけてマグマ上昇により岩石が割れる「火山性地震」および、地下15キロ付近でのマグマ活動による「低周波地震」が月100回以上観測されました。
現在では、地震計や傾斜計など、多数の観測機器が、富士山の周りを取り囲むように設置されています。



鬼界カルデラ噴火間違った警戒レベル
2018年2月、神戸大学の海洋探査センターは、九州・薩摩半島から約50キロ南方沖の海底に位置する「鬼界カルデラ」に、世界最大級の溶岩ドームを発見したと発表。
神戸大は過去3回の探査航海を通して、海底地形の精密調査や無人ロボットによる観察や岩石サンプルの分析などを実施。その結果、体積32立方キロを超える地球上で最大クラスの溶岩ドームが形成されているのを確認。
鬼界カルデラは、約7300年前に巨大カルデラ噴火を起こし、九州南部の縄文文化を滅ぼしたとされています。その噴火後に大規模なマグマだまりが形成され、現在も活発に活動している可能性があるとみています。
日本列島では今後100年間に約1%の確率で発生すると考えられています。
神戸大によると、こうした超巨大噴火は日本では過去12万年で10回発生したとされています。

2020年6月4日、鹿児島県桜島が爆発。鹿児島地方気象台は映像などをもとに「大きな噴石が飛んだ距離は火口から2キロ以内」と発表。噴火警戒レベルは住民の避難を必要としない「3」が維持されたのです。
翌日、周辺住民の一人は資材置き場で、屋根にあいた穴を発見。大きさは20CMほどで鉄骨の骨組みの一部もへこんでいました。また近い林の中に、ぽっかりとあいた大きな穴、直径6M・深さ2Mの大穴を見つけ、あたりには石が転がり、かすかに焦げたようなにおいもしまし「噴石か」と思ったそうです。
6月8日、島内の別の地域でも直径5センチほどの噴石が飛んで来たたことを知り、鹿児島市に写真を送信すると、すぐに市や気象台の職員と専門家が現地にやってきました。
大きな穴は桜島から飛んできた噴石によるものと断定。推定で50CM~1Mの火山弾は衝撃でバラバラになっていたのです。直撃していれば命に関わる問題。気象台は大きな噴石の飛んだ距離は火口から3キロを超えていたと訂正。この距離まで火山弾が飛んだのは34年前の1986年11月以来の事態です。
桜島では初めて、住民の避難が必要な「レベル5」にあたる事態でしたが、実際には5に引き上げられることはなかったのです。気象庁火山課幹部は「レベル5に引き上げる判定基準の『大きな噴石が火口から2.5キロ以上に飛散』とは複数の噴石が飛ぶことを指している。今回は噴石が1つなので、レベル5に上げる対象ではない」としたのです。
しかし、公開されている判定基準のどこにも「複数」という言葉はありません。気象庁は“見逃し”を認めたくないがために、みずからの基準をねじ曲げて解釈したようです。
6月12日になって「噴石が1つでも飛散とみなし、今回の噴火で、噴火直後に噴石を確認できていればレベル5に引き上げていた」とそれまでの説明を修正。「我々の説明が十分ではなく誤解を招いてしまった、反省している」と。
噴火警戒レベルが導入された2007年以降に起きた大きな噴火でみると、いずれも噴火のあとに警戒レベルが引き上げられているのです。噴火警戒レベルは予知情報ではなく、防災情報であり、現実に起きたことに対してレベルを引き上げるしかないのです。
100年余り前の1914年1月に発生した「大正噴火」では地震など噴火の前兆とみられる現象が相次ぎましたが、当時の気象台は噴火の可能性を否定し、住民に避難は必要ないと述べた、という経緯がありました。その言葉を信じた人は島にとどまり、大噴火で急いで冬の海を泳いで逃げようとして命を落としたのです。