空き家が危ない


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東京都の空き家解体自己負担での解体例
2016年3月、東京都葛飾区宝町にある木造の空き家で区が強制撤去に踏み切りました。この家は築50年以上が経過し、壁が大きく崩れるなど老朽化がかなり進行していました。
その10年前に地域住民から苦情が寄せられ、区が対策を求めても所有者が応じない状態が続いていました。しかし、2015年5月に「空き家等対策特別措置法」が完全施行されたことを受け、法に基づいて改善の指導、勧告、命令、強制撤去の手順を践みました。解体と廃材処分の費用約180万円は区が所有者に請求します。
近くには京成電鉄の線路が通り、区は倒壊などの恐れがあるとして、強制撤去に踏み切ったのです。
群馬県前橋市では2016年3月、危険な空き家に認定されていた木造の家を所有者が自主的に解体しました。市では2013年に空き家に関する条例を施行し、以前から所有者に改善を指導していたが、所有者は「資金がない」と拒んできました。しかし、市が法に基づく命令を出して所有者の費用負担を伴う強制撤去が現実的になると、態度を一転させたのです。
所有者は「強制撤去されるよりも、自分で知り合いの大工に依頼した方が安上がりになる」との説明をしたとされています。市の担当者は「所有者に対して強力な指導を行えるようになったことの効果は大きい」と評価しています。
このままでの強制撤去は自治体側に負担を強いることになります。
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空き家の実態自治体の取り組み
全国の空き家率は増加の一途で、2013年においては空き家数が820万戸、空き家率が13.5%となりました。
5年前に比べると、空き家数は63万戸の上昇、空き家率は0.4%の上昇です。東京都、神奈川県、愛知県、大阪府の4つの都府県を合計すると、約240万戸の空き家が存在します。全体が820万戸ですから、4都府県で約29%にも達し、対策が急がれるのはむしろ都市圏であるとわかります。
日本国内の空き家は2013年時点で820万戸を超え、2018年ごろには1000万戸を超えると言われています。さらに2020年の東京五輪の終幕が、空き家の爆発的増加の始まりになると言われています。
また、総務省が2019年4月の発表した「平成30年住宅・土地統計調査」では、全国の空き家数は約846万戸で、空き家率は13.6%に達し、
空き家率は0.1ポイントの上昇となりました。
広島県呉市では空き家増加を懸念し、解体費用の補助制度などを設けてはいますが、以前は実数を把握出来ませんでした。
空き家対策特別措置法施行を受けて、水道局が蓄積している水道利用状況を調べ、利用がない家を訪問して居住の有無を確認する調査を実施した結果、空き家が5千軒弱あることをつかんみました。

一方、秋田県大仙市では同法施行よりも前に、危険な空き家を強制撤去できる条例を独自に制定。
条例に基づき13件の強制撤去を実施し、計622万円の費用をそれぞれの所有者に請求しましたが、いずれも資力が乏しかったため、回収できたのはたったの3万円のみでした。
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空き家率の深刻さ解体の費用負担は誰が
2007年に財政破綻した北海道の夕張市の空き家率は33%、2013年に財政破綻したアメリカミシガン州のデトロイト市の空き家率は29.3%でした。明海大学不動産学部教授は「空き家率が30%を超えると自治体は財政破綻する」と発言しています。
現在、日本全国の空き家率は13.5%ですが最近野村総研が出した調査結果によると、現状のまま対策が進まない場合、2033年の空き家率は30.2%と予測しています。
これは自治体どころか、国全体が財政破綻するリスクを示した予測になっているとも言えます。空き家が増加し続けると新しい住民が引っ越して来ず税収も見込めないため最終的には自治体財政破綻という最悪の結果を迎えます。
そして、空き家率が30%を超えてしまうと犯罪が増え、地域が荒廃していき、「スラム化」が一気に進むと言われています。
東京都大田区2012年、ある条件を満たせば強制解体・撤去が可能になり、2014年5月東京23区内では初になる、いまにも倒壊しそうな築46年の木造2階建てアパートが強制撤去されました。
このアパートは、10年ほど前から、強風で剥がれたトタン屋根が飛んできて危ないなど、近隣住民から苦情が寄せられていたのです。この解体費用は500万円になり、所有者に請求したが支払われなかったため、土地と預貯金を差し押さえて費用を回収しました。
例えば、2015年10月神奈川県横須賀市では、国の特措法を初めて適用し、倒壊の危険のあった空き家を解体。その撤去費用の全額、約150万円を市が税金で負担しているのです。
2013年に総務省が実施した「住宅・土地統計調査」によると、空き家の数は全国で約820万戸。この20年間でほぼ2倍に増え、空き家率も13.5%と過去最高を記録。その中で、倒壊などが懸念される危険な状態の空き家も含む長期間放置されている空き家は約318万戸に達しているのです。
空き家が及ぼす悪影響は倒壊や崩落のみならず、不審者の立ち入りや放火などの犯罪の誘発、樹木の繁茂や不法投棄、景観悪化など多岐にわたります。では、所有者が支払えないとき、誰がその費用を負担するのか。
今後各自治体は、空き家解体の費用負担が増えていくのは明らかです。