耐震建築物が危ない

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超高層建物の揺れ震度6強の恐怖
2000年5月以前の超高層ビルは長周期地震動による揺れを十分考慮せず、揺れの大きさの指定もなかったのです。2000年6月以降は、長周期地震動の影響を考慮したうえで、揺れの大きさを「80カイン」に設定し、この揺れの大きさに耐えられるよう検証しなければならないとしています。
毎日新聞の調査では、2000年5月までに認定され、公開されている長周期地震動の影響が懸念される217棟の超高層ビルの設計情報を分析しました。
その結果、217棟のうち125で、揺れの大きさが80カインを下回っていることが分かりまし。そのうち17棟は共同住宅を含む建物でした。ちなみに80カインを超えていたのは63棟で、不明は29棟でした。
2003年十勝沖地震では約100カインの長周期地震動を観測。このため土木学会と日本建築学会は、現行の80カインを超える100カイン級の検証用地震動を提案する方針です。
国交省としては「学会の結論が出れば、所有者による検証が必要になる」としています。
耐震補強の必要な超高層ビルが多数あるのが現実であり、早急なる耐震診断の実施が望まれます。

  
2012年6月、大学や大手ゼネコンなどによる研究会の分析から、地盤が軟弱だと震度6強の場合、10~15階建て程度の中層ビルに大きな損傷が及ぶ恐れがあることの研究発表がありました。

研究地点には、東京・新宿、霞が関の表層地盤が固い2か所と、横浜市、千葉県浦安市、千葉市の比較的軟弱な3か所を選定。

横浜や浦安では、中低層ビルが揺れやすい周期1~2秒の地震動が大きくなることが判明しました。壁の耐震性が低い中層ビルの場合、構造の変形や内外壁の崩壊、建具の破損、天井の落下などの可能性があります。

ゆっくりした周期3秒以上の地震動で揺れやすい60メートル以上の超高層ビルへの影響は、比較的小さいとみられます。



都内の危険な建物免振ダンパーの亀裂
2018年3月、東京都は1981年以前の旧耐震基準で建てられた大規模建築の耐震診断結果と建築物名を公表。
その結果、震度6強以上の地震で倒壊・崩壊の危険性が「高い」建物は156棟で、危険性が「ある」95棟を含めると251棟にのぼります。危険性が「高い」ビルには新宿の「紀伊国屋ビルディング」、渋谷の「SHIBUYA109」、橋駅前の「ニュー新橋ビル」、六本木の「六本木共同ビル(ロアビル)」、台東区の「アブアブ赤札堂 上野店」、中野の「中野ブロードウェイ」などが揚げられました。
又、渋谷の「道玄坂共同ビル」など、耐震改修中のビルもあります。
中にはマンションの実名までも明かされていますので、転売或は、資産価値に大きく影響されるでしょう。
2011年3月の東日本大震災で宮城県大崎市にあるビジネスホテルの免震装置の鉛ダンパーに亀裂が生じて取り換えた免震建物があります。周辺のほかのホテルは外壁などが損傷したものの同ホテルは建物に被害がなかった事で、免震建物の効果はあったのでしょう。
1998年竣工のホテルは、天然ゴム系積層ゴム8基と可とう部の直径が180mmの鉛ダンパー8基、鋼材ダンパー2基を組み合わせです。

この震災で、積層ゴムと鋼材ダンパーに問題はなかったのですが、地下の免震ピットにある鉛ダンパーは、可とう部の上下に深さ15mmほどの亀裂が生じました。今回は、鉛ダンパー8基すべての交換し、要した費用は、材料費と作業費を合わせて約800万円。
このほか、鉛ダンパーに亀裂が生じた免震建物が東京都、神奈川県のほか、大阪府などで少なくとも30棟あることが分かりました。

東北地方では、鉛ダンパーの可とう部の外周に沿って亀裂が生じるなどしていた。関東地方では、鉛ダンパーの表面に亀甲状の微細な亀裂などが見つかり、以前から生じていたひび割れが今回の地震によってさらに拡大し、最大で深さ3cmの亀裂に進展した鉛ダンパーもありました。
福岡の大学教授らの研究によると、鉛ダンパーは片振幅10cmの変形を10回ほど繰り返すと亀裂が発生。さらに、300回ほど振幅を繰り返して初めて破断に至るようです。
このような金属は、昔から金属疲労が問題とされていました。大地震でダンパーが壊れたら定期点検や、交換が必要ですが実施していないビルもあるようです。建物の主要構造である、鉄骨もそうですが、実際に、柱、梁の鉄骨を点検するには、壁や仕上げを壊す必要性が出てきます。その費用を考えると中々メンテナンスはむずかしいのでしょう。今回のような地震を何度も経験すれば、そのうち大きな問題に発展するでしょう。
日本免震構造協会による調査の結果、鉛ダンパー以外の免震装置でも一部に損傷が見つかりました。 例えば、宮城県にある免震建物では、滑り支承や粘性系ダンパーが津波をかぶってさびが発生。鉛ダンパーと並んで多くの免震建物に使われている鋼材ダンパーでは、U形に加工した鋼材のロッドの一部に残留変形や塗装の剥離があったほか、ロッドを固定する取り付けボルトに緩みが見つかりました。 



免振ゴム偽装事件制震ダンパー改ざん事件
2015年6月、東洋ゴム工業による建物の揺れを少なくする免震ゴムデータの偽装事件がありました。
免震ゴムとは、建物の揺れを少なくするため建物の基礎部分に積層ゴムを束ねたものを設置するものです。これにより、大きい地震にも耐えうることを期待します。
この偽装事件により、2004年7月から2015年2月に製造・出荷した免震ゴムについて、国土交通省の認定する性能評価基準を満たしていない”不適合な製品”だったことが判明。
取得した大臣認定のうち3製品は、技術的根拠がないのに認定を取得するため、”データを改ざん”した書類を国交省に提出し、後者については、自主的に認定の取り下げを申請し、国交省から取り消されました。その後の調査で、性能基準を満たさないか、データがないため性能を判定できない同社の免震ゴムを使った病院やマンション、自治体の庁舎などは全国で154棟に上ることが判明しています。
日本免震構造協会は「書類全体でうまく整合性をとり、偽装されると、見抜くのは難しい」と打ち明けています。また国交省の住宅局建築指導課は「免震ゴムに関しては、サンプル調査までしたことはない」と説明しているのです。
免震ゴムは、小さいものでも1基100万円以上し、取り替えるとなると、建物をジャッキアップしなければならず相当の時間と費用がかかるのです。
因みに東洋ゴム工業は2007年にも、学校などで使う断熱パネルの耐火性能を偽装したことがあります。
2018年10月、油圧機器メーカーKYBと子会社による免震・制振装置の検査データ改ざんが発覚しました。
地震時にビルの揺れを抑える免震・制振装置の検査データを15年以上にわたり改ざんしていたと発表。
不正が発覚したのは、油圧を利用して揺れを吸収するオイルダンパーと呼ばれる装置で、建物の地下部分に使われる免震用と地上部分に使われる制振用があります。免震用では建物の地下階などに設置し、装置が伸縮することで地震のエネルギーを吸収し、制振用では地上階に据え付け各階の変形を抑えることで建物全体の揺れを少なくする装置です。
改ざんの疑いのあるものを含めると、全国のマンションや病院、自治体庁舎など計986件の建造物で使われていました。東京スカイツリーにもKYBの制振装置が使われています。公共建物については公表されているものの、マンションを含め、民間の建物名は明かされていません。
名を公表すれば、資産価値は崩れ、取り替えた後にも信用はなかなか回復はしないでしょう。
制震ダンパーは一般的には壁の中に設置されていて、取り替える場合には、壁を壊すことになります。しかも取り替え途中に地震が来ないとは言えません。
装置を改ざんしなければならない程、装置には問題があったのか、新しい装置は果たして問題はないのか。