怖い液状化

HOME
地震による液状化札幌市清田区の液状化
湾岸及び川岸においては、砂が多く含まれているために地震による液状化は避けられないでしょう。
この液状化現象が近年(1964年)新潟地震でクロ-ズアップされました。
阪神淡路地震の時も、埋め立地で起こりました事はまだ記憶に新しいです。
普通、3階建以上の建物においては、地中の硬い地盤まで杭を打ち込むので液状化で地表面が陥没しても建物は動かないと考えて来ましたが、1964年の新潟の地震では液状化により杭が折れていた例が見つかりました。
昭和53年の宮城地震でも地中のコンクリ-ト杭が折れているのが確認されています。又阪神大震災の時も杭が破壊されているのがいくつも見つかっています。
このように、杭をしっかり打っているからといって安心は出来ないのです。液状化の可能性がある地域では、問題があります。
2007年7月の新潟中越沖地震では、柏崎市の北側にある鯖石川の河口近くの住宅団地で、液状化による被害が発生しました。団地は約30年前に川沿いの土地を埋め立てて造成され、分譲されました。地震には耐えた住宅ですが、液状化にはどうしようもなく家が傾くという深刻な被害を受けました。
阪神大震災以降、地盤の液状化が起きなかった大地震はほとんどありません。3年前の新潟県中越地震の時も、長岡市の広い範囲で液状化が発生し、住宅が不同沈下を起こしています。
2011年2月に起きたニュージーランド・クライストチャーチの地震で、史上最大規模の液状化現象が起きていたことが、日本の地盤工学会などによる現地調査でわかりました。
液状化は市中心部から海岸にかけて東西7キロ・メートル、南北8キロ・メートルもの広範囲に及び、その6割の地域に顕著な痕跡が残っており、「国際災害チャーター」の衛星観測でも、広範囲が泥に覆われた様子が確認。
クライストチャーチは深さ10メートルまで細かい砂が堆積しており、液状化しやすく、地元のカンタベリー大学教授は「今回の被害は4万~5万棟に上りそうだ」とみています。
2018年9月インドネシア・スラウェシ島地震でも内陸部で大規模な液状化被害がありました。
2019年6月に山形・新潟地方を襲ったM6.7の地震で広範囲にわたる液状化現象が起こりました。山形・鶴岡駅前の駐車場では、砂地に水が噴き出た穴と水たまりが数か所ありました。駅の近くには川がながれており、古くは川の河川敷が近かったのかも知れません。
2018年9月、北海道南西部の胆振地方を震源とする地震があり、震度7を観測した厚真町では多くの山の斜面が崩れました。
また札幌市清田区里塚では、分厚い泥が数十センチの厚さで道路にたまり、車のタイヤなどが埋まり、通行が難しくなりました。
この清田地区、もとは「厚別本通」と呼ばれたあたりで、昭和19年、美しい清らかな水田地帯という意味で「清田」と名付けられました。
明治6年、札幌本道(現在の国道36号)の開通により、旧国道と厚別川との交差点付近に駅逓ができ、宿場の役目を果たしていました。明治10年、厚別地区で最初の米作りが今の清田小学校校庭あたりで始まりました。
その後、次第に農業が営まれるようになり、厚別川のほとりには水田が広がりました。
明治32年には、月寒尋常小学校厚別分教場(現在の清田小学校)が開校。昭和30年代後半からの清田団地の開発に伴い宅地化が進みました。
現在も民間の宅地開発が行われていますが、段差がある土地のため造成工事を実施しています。
元々は水田でしたので、水はけも悪くまた、井戸も多かったため、地中には水分が多い土地だったのです。この水分を抜かずに宅地開発は勧められたのでしょう。
そして造成後すぐに宅地販売をする事に。本来なら造成後しばらくは地盤の安定(沈下)を待ってから建物を作らなければならない場所です。
大きな地震が来れば液状化が発生するのは必至だったのです。
実は2003年9月の十勝沖地震のときも液状化した経緯があります。



東京湾岸の液状化液状化後の変化
2011年3月の東日本大地震で千葉県浦安市では市内の3/4を占める埋立地で液状化現象により断水と下水道使用制限、ガス供給停止の「三重苦」を抱えたのです。
高級住宅地として人気を集めてきた街は、波打つ道路、傾いた住宅と電柱、数え切れない地割れや陥没など。そして、街中に積み上げられた泥土の山。
地域でみると、新しく出来た埋立地の地域が被害が深刻のようです。そして、千葉県浦安市の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの駐車場は広範囲に液状化し、駐車していた車が砂にはまって動けなくなっていました。
付近では電柱が大きく傾いたり、学校の建物の周囲が50センチ程度沈下。また、東京のお台場から新木場周辺の埋め立て地でも30センチほどの噴砂や、マンホールの浮き上がりなど、激しい液状化がみられました。
千葉県の検見川浜駅前では駅前の高層ビルの足元では、歩道と10cm以上の段差が生じ、周りでは液状化による砂が地表に露出し、風で砂埃が舞い上がる状態でした。
浦安市は大半が埋め立て地であり、市全体の86%が液状化し、90センチ近く沈下した建物もありました。当時千葉県での液状化の影響を受けた住宅は18674棟にのぼりました。
東京湾岸部では、浦安市だけでなく習志野市でも多数の世帯で下水道が不通となり、市民は生活排水が流せず、トイレもままならない生活を余儀なくされました。
市内約5600世帯で生活排水を流せない状況が続き、市内19カ所の仮設トイレや市が配る凝固剤付きの袋で、住民たちはどうにか用を足す状況に。
飲食店では、皿にラップをかけて洗い物が出ないよう工夫したり、排水は庭にまくなどの対応。下水管からは汚水が漏れ悪臭が漂うこともしばしばあり、市はバキュームカーを走らせて詰まりの除去に懸命でした。

東日本大震災で地盤の液状化に見舞われた面積が、東京湾岸地域だけで、JR山手線の内側の半分以上、40平方キロを超え、阪神大震災では神戸~尼崎市間で液状化が起きた面積は10平方キロ程度でした。
北海道胆振東部地震で大規模な液状化が発生した札幌市清田区里塚地区では、地震発生から約2カ月がたっても、地盤に空洞ができるなどの変状が続いています。
札幌市が地震後に里塚中央ぽぷら公園に設置した変位計は、10月末までに33㎜の沈下を記録。
公園の南側の住宅では敷地の地下に新たな空洞が複数見つかりました。基礎付近に空いた空洞は、深さが70㎝以上あり、土砂で埋めた後も、再び隙間が発生しています。公園の東側では、地盤のくぼみや亀裂、隙間が地震後に増加しています。変状は徐々に大きくなっているようです。この住民らは、宅地の下の空洞調査を札幌市に求めているが、市は応じない姿勢ですそれに対して札幌市土木部係長は「宅地は民間の問題なので、地主が自分で調査して、復旧するのが基本だと考えている。大きな液状化が発生した後なので、地盤がしばらくの間動くのは一般的だと捉えている」と説明。
道路面下の空洞調査について市土木部道路維持課は、「被災の原因を調べる調査ではない。道路の陥没事故を防ぐ目的で実施する」と。
被災が大きかった箇所は、現在アスファルトの舗装工事を実施しているので、空洞が見つかれば一緒に修復する考えです。

現在も続く沈下に対して、ある大学教授は「里塚地区の地盤沈下量は局所的で大き過ぎる。液状化だけでは被災原因を説明しきれない。土砂の流出で地下に大きな空洞ができている可能性がある。適切な対策を講じるためには、被災地域全域の地下を早急に調査しなければならない」。



東京湾岸液状化訴訟東京湾岸液状化訴訟ー2
2012年2月、東日本大震災による液状化で住宅が傾くなどした千葉県浦安市のタウンハウスうち27戸を所有する32人の住民が、分譲販売した三井不動産と三井不動産レジデンシャルを相手取り、復旧費用など計約7億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。
損害賠償の内訳は、地盤改良工事、建物の解体・撤去工事、敷地内の排水溝や道路に対する補修工事の各費用や建物の時価相当額などです。
この住宅の敷地と同じ頃に埋め立て造成された近隣の-東京ディズニーランドの敷地や日本住宅公団(現・都市再生機構)の分譲地は、サンドコンパクションパイル工法などによる地盤改良が施されていたために液状化被害を免れていたのです。
ですから原告側は、三井不動産が東京ディズニーランドの開発の当事者でもある以上、タウンハウスの分譲地の液状化リスクを分譲時に認識していたはずと主張。
同社に地盤調査結果の開示と地盤改良を行ったか否かの回答を求めましたが「当時の資料は残っていない」と回答されたことを理由に、同社がタウンハウスの分譲で地盤の調査と改良を行わなかったと見なしたのです。
さらに2012年8月には、浦安市の戸建て住宅の所有者87人(54戸)が、分譲した三井不動産(東京)などを相手取り、約19億6557万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。そして、同市の別の戸建て住宅の所有者16人(12戸)も、分譲した京成電鉄に約4億7177万円の支払いを求め、東京地裁に提訴したのです。
東日本大震災で液状化被害を受けた千葉県浦安市の住民による、三井不動産などに対する損害賠償訴訟で、2019年6月、最高裁は住民側による上告の不受理などを決定し、住民側が敗訴した2審の東京高裁判決が確定しました。
問題の一つは、分譲地の販売は商事消滅時効が適用される商行為であり、引き渡しから5年を経過した時点で瑕疵担保に基づく損害賠償請求権の時効は完成している事。
もう一つは、東日本大震災での継続時間の長い大地震で液状化が発生することについての知見はなく、被害を予見できる可能性はなかった事。
1964年に起きた新潟地震での液状化は世に知られ、その後液状化の研究が始まりました。その後も何度か地震による液状化は経験して来たのです。
今更「液状化が発生することについての知見はない」とは言えないはずなのです。
今後も大地震による液状化は発生します。そのために国は保証問題について敏感な姿勢をあらわにしているのでしょう。
このほかにも舞浜などの住宅地住民が宅地の分譲会社を相手取って争っていますが、これまでのところいずれの裁判でも住民側の敗訴が続いているのです。