悩ましき修繕積立金 | 機械駐車場が足かせ | ||||
2018年現在、東京の湾岸エリアで販売が始まった大規模開発では、管理費と修繕積立金の合計が1平方メートルあたり400円台の後半に設定されていて、例えば85平方メートル程度の住戸では月額負担は4万円前後となります。これに固定資産税や都市計画税を合わせると、その住戸を維持するためだけのコストは1平方メートルあたり800円を超えそうです。 ここから修繕積立金が値上げされることを想定すると、将来は1000円に達する可能性もあるのです。 マンション管理の面でも、人手不足が深刻です。ですから販売物件の予定管理費と修繕積立金が目に見えて高くなっています。 2015年前後の管理費は月額にして1平方メートルあたり200円が相場でした。 都心だと、300円程度。郊外の低価格エリアでは150円前後に設定されていました。大規模マンションの修繕積立金は、1平方メートルあたり月額100円から150円前後でスタートして、徐々に上がっていき、20年後には250円から300円前後まで引き上げる長期修繕計画が多かったのです。 新築引き渡し時のこれらの月額負担を、1平方メートル300円から350円程度にとどめると、70平方メートルの住戸でも月額負担は2万円台前半に収まるので、家計への負担感は軽く見え、その方が売りやすいので、修繕積立金は低めに抑えるのが通例でした。 国が全国のマンション管理組合を対象に行った調査によると、25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を算出している組合が半数を超えています。また1戸当たりの修繕積立金の額も増加傾向が続いていることが分かります。 | 若者のクルマ離れと、高齢化が進みクルマを手放す住民が増える事により、マンションの機械駐車場で空きが目立ち始めているます。その影響は今後迎えるであろう大規模修繕計画に大きな打撃を与えます。 まず、駐車場収入を月々の管理費に充当されているマンションは多く、将来の機械駐車場の更新費用不足となるでしょう。 そうなれば、住民1戸当たりの一時金が必要になる事が必死でしょう。 ただ、クルマを所有していない住民には、駐車場が空いているかどうかは気づきにくいため、自分たちの問題に直結していることに思いが至らない人も多いでしょう。 あるマンションでは、駐車場分だけでなく全体の修繕費が不足していたため、修繕費の値上げを訴えましたが、「まだ先の話」と、値上げ案は却下されてしまった例もあります。 規模が大きなマンションとなると、各地方自治体による、「付置義務」が大きな足かせとなっている面もあるのです。 |
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困難な給排水管補修 | 無関心居住者の悲劇 | ||||
1980年に竣工した東京大田区の100世帯マンションでは、毎月2世帯が新たに漏水する程の状況なのですが、補修工事の費用が集まっていない状況です。 そこで、組合が入っている保険を補填していましたが、あまりに頻繁であったため、適正な利用でないことが発覚してしまい、保険金が出なくなってしまったのです。平成元年以前のマンションの場合、給排水管がコンクリートの床の中に内に埋め込まれていることがあり、床を一度壊して工事をする必要があり、補修完了後は床を又復旧する事になり、工事費が大きくなります。 しかも修繕前に室内をリフォームしていた場合は、大金をかけたリフォームが無駄になるため、反対する人が出る事になります。 築35年、1000世帯を越すあるマンションで大規模修繕を前に住民アンケートを実施しました。リフォームの有無に加え、その時、給排水管交換についても尋ねたところ、交換したという世帯はありませんでした。 リフォーム時に給排水管の交換をするように義務付けておけば多少なりともマンションの延命が出来ますが、リフォーム業者の多くは、給排水管は面倒臭く、手を付けたがらないのです。 所有者も交換の重要性を知らないものから当然補修を頼む事はなく、その状況が続くと、ある日、給排水管の事故が発生してしまうのです。 | 静岡県にある築38年のマンションです。エレベーターは停止状態、外壁の一部はコンクリートの鉄筋がむき出し、各部屋のドアは錆をおびています。受水槽や汚水桝は悪臭を放っていました。 2016年マンションの臨時総会で解任した元管理者と称した男Aに対し、約20年間分の使途不明の管理費6600万円余と、Aが所有していた3室の未払い管理費480万円などの支払いを求める裁判で係争中です。 竣工当初、分譲会社が管理に当たっていましたが、翌年に同社が倒産。区分所有者が自主管理を行うことになり、管理者となったのがAでした。 Aは、清掃や日常業務を行う前管理人が病気で退職した後、区分所有者から委任状を取り付けて「管理者」となり、月額12万円を「管理者」報酬として要求。 管理者であるから管理人としての仕事はせず、日常の清掃は区分所有者2人を勝手に管理者補助に指名して行わせていたのです。しかも徴収した月額約32万円の管理費のうち、共用部の電気代約4万円を除いてはほぼすべてAが着服していたようで、大規模修繕はおろか、消防設備点検や受水槽の清掃、エレベーターの日常定期点検なども一度も行われていなかった。 管理組合の総会も分譲会社倒産後に1回だけ開かれたようだが、その後は一度も開かれていない。そこで一部の区分所有者がマンション管理士に相談。その時点では管理組合の口座残高は10万円を切る状態で、しばらくは共用部廊下の電気代にも事欠くほどでした。 その後、相談に乗ってくれた管理士に、区分所有法に基づいて管理者に選任され、この2年間、マンション再生に奔走。300万円以上の未納管理費を回収したほか、汚水桝の修繕や鉄部塗装などが行われたことで、状態は改善。賃貸に出された部屋には数人が入居。 それでも全50戸のうち、20戸以上は空室。エレベーターはいまだ止まったままである。中にはゴミ屋敷のままで放置されている住戸もあり、それが何戸あるかは把握できていない。Aが悪いのはもちろんですが、管理に無関心のまま、Aにすべてを丸投げしてきた無関心の区分所有者にも責任があります。 |