火事の怖い現実


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コンクリートの爆裂怖い欠陥住宅
1980年代の後半、超高層ビルへの需要が高まり、普通のコンクリートより強度のある高強度コンクリートが開発され、鉄筋コンクリート造による超高層ビルが建ち始めました。
ところがその後、「耐火性」に注目が集まった結果、高強度コンクリートは「耐火性」に問題がある事がわかったのです。
それまでの高強度コンクリートの特徴は粒子の緻密性にあり、表面が200℃で15分程度経つと、内部の水蒸気が膨脹し、その逃げ場が無くなるため「コンクリートの爆裂」現象が起き、表面のコンクリートが剥がれ落ち、内部の鉄筋があらわになるのです。こうなると、建物自体の強度は当然弱くなります。
そのため建設業界は研究を重ね現在では爆裂の起きないコンクリートの開発に成功しています。具体的には、外国からのヒントを得てコンクリートの中にポリプロピレンの繊維を混入する事により、水蒸気の逃げ場を確保することができたのです。
そうして日本初の耐火超強度コンクリートによる32階建てのマンションが01年に採用されました。
1990年前後の鉄筋コンクリート造による超高層マンションなどは火事に対する警戒が必要なのです。
2009年6月、大阪府吹田市の府営千里古江台住宅の1棟で、4階と5階の一部が燃える火事がありました。その後大阪府の調査で、4階の火元の部屋から5階に延焼したのは46年前の施工不良が原因だったと発表しました。
火災があった棟は1963年に完成した鉄筋コンクリート5階建て住宅で、吹田市消防本部では、火元の部屋の押し入れの天井と5階の床に穴があり、ここから燃え広がったと判断したのです。その穴は、 建物の角にあたる部分の各階に穴を開け、そこに糸を垂らして垂直の基準にするためのものでした。
欠陥住宅として大阪府は、延焼した部屋の住民との間で補償協議を始めています。
2010年1月、国土交通省の調査では、手抜き工事としており、階上の部屋に炎が噴き上がる恐れのある公共賃貸住宅が全国で536棟(1034戸)あることが、わかりました。
都道府県別の割合をみると、奈良19.3%、山形18.8%、大阪16.5%など。埼玉や神奈川など13県では見つからなかった。補修費用については「業者が負うべきだと考えるが、自治体が負担するケースも多いと思う」としています。ただ、工事の監理は県などの公共機関で行う事ですから、建て主その者の責任は当然あるのですが。
今後は、民間マンションを含め、早急に本格的な調査をしなければいけません。 
08:30

サイレントチェンジの恐怖火元の責任
「サイレントチェンジ」とは、メーカーが知らないうちに、下請け企業などが部品の材料を変えてしまうことを指します。
例えば、内部でショートが起きたパソコンの場合、2015年以降、500件以上の事故が起きていています。
また、除湿器が発火し、5人が負傷した事例もあります。映画を楽しむために購入したプロジェクター。外出している間に電源コードから出火しました。
2015年01月、山形県で起きたこたつ火災では3名が死亡、1名が軽傷を負いました。こたつを延長コードに接続して使用していたところヒーターが突然、落下したのです。そしてこたつ及び周辺を焼損する火災が発生しました。
結果的にメーカーが15万台のコタツの回収・返金を余儀なくされることになりました。その原因は、ヒーターを止めるプラスチック部品にありました。日本のメーカーが東南アジアの工場に製造を委託したものでした。
メーカーが知らない間に、下請け企業などが部品の材料や仕様を変えてしまったのです。
ものづくりのグローバル化が進む中、サイレントチェンジによる見えない危険が潜んでいるのです。このように私たちの身の回りのさまざまな商品に、サイレントチェンジの危険が潜んでいます。
隣、上下の家が火事になって火が燃え移り、自宅も火事になってしまった時、隣の家に弁償或は補償を請求出来ません。
これは明治32年に制定された「失火責任法」という古い法律で、損害賠償を請求することができず、現在でも適用されています。
日本は昔から木造家屋が密集しており、それも長屋建てが多く、ひとたび火事になると失火者に過大な責任を課すことになり、個人の資力では損害賠償を行うことができないため、「火元が重大な過失により発生させた火事でない限り、損害賠償責任を負わなくてもいい」と定められたそうです。
ただし「民法第709条 の規定は失火の場合にはこれを適用せず。但し失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず」 とあり、ある状態を放置しておいたら、誰が見ても危ないのにそれをほっておいた結果、火災が起きて周りに類焼したようなケースであれば、責任問題となります。
例としては、天ぷら油を入れた鍋をガスコンロで加熱したまま、長時間その場を離れた間に引火。
電気ストーブをつけて布団で横になったところ眠ってしまい、布団に火が燃え移って引火。
石油ストーブのそばに蓋の無い容器に入ったガソリンを置いた。寝タバコで引火、火災が発生、などです。



危険な耐火材料火事に弱いアパート
2018年7月、仙台市青葉区の「せんだいメディアテーク」で、セラミック系の耐火被覆材の一部が落下。
耐火被覆材が約5.1m下の机に落下し、近くの椅子に座っていた利用者の40代男性に破片が当たり、右肘に軽傷を負いました。
市は2015年に定期調査時には異常は見つかっていません。しかし、事故翌日施工を担当した熊谷組が点検した結果、耐火被覆材の亀裂や膨れが新たに見つかったのです。市の見解は、地震や経年劣化による層間剥離と推測しています。
耐火被覆材は,鉄骨造建築物の梁・柱等の躯体を火災による火熱から保護し,建物を崩壊から守ります。そのため,その品質保証はたいへん重要な要素であり,被覆厚さと比重を認定どおり正確かつ均一に施工することが耐火被覆材の施工において求められます。
「せんだいメディアテーク」は複雑な構造であり、かつデザイン重視したために、耐火被覆材の材料の選択を誤ったのでしょう。
 タワーマンションの構造は鉄骨造です。当然耐火被覆材を使用してありますが、その点検をしっかり行われているか心配です。
岐阜市内にあるレオパレス21の木造アパートの所有者は一級建築士に依頼して2018年3月から3回、建物を調査した結果、小屋裏には界壁がないことが判明。また各階の天井裏の界壁に不備がある事もわかりました。

その後2018年5月、レオパレス21は確認申請図書に記載された小屋裏界壁が未施工の物件が複数見つかったことを発表。調査した規格集合住宅290棟のうち、「界壁なし」の物件が17棟見つかり、21棟で「界壁部分に施工不備がある」ことを公表。その後、現存する915棟のうち、現在までに168棟で界壁がない物件を確認した。
2018年8月、レオパレス21が1990年代に販売した木造アパートの所有者により、建物に建築基準法に違反する瑕疵があるとして、約2000万円の損害賠償を求める訴訟を岐阜地方裁判所に起こしました。
界壁とは各住戸毎に防火壁を屋根裏まで立ち上げたもので、火災の延焼を食い止める壁なのです。もし建物内で火災が発生すれば、直ちに建物全体に火はまわってしまいます。



火災警報を出さない悲劇
2016年12月、新潟県糸魚川市で市街地約4万平方メートルが焼失した大火の時、火災気象通報は発表されていたが、市の発令基準に達していないとの理由で市町村や消防は火災警報を出していませんでした。
2017年5月、岩手県釜石市山林で起き、2週間燃え続けた火災で、消防は発生時に火災気象通報を受けていましたが、結局火災警報は出ていません。
地元消防の担当者は「工場の稼働が止まるかもしれず、社会的、経済的な影響を考えると、すぐに発令には踏み切れない」との答え。
東京消防庁は2009年からの9年間で1996回火災気象通報を受けたましたが、一度も警報発令はしていません。東京都では42年間出ておらず、名古屋、大阪、福岡各市は過去一度も発令されていないのです。
2005年、総務省消防庁の検討会としては、火災気象通報を受けた場合は原則、警報を発令すべきとしています。
警報の『空振り』を恐れて出し渋る、いわば責任逃れの考え方が、悲劇を生むのです。
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