建物に潜む危険な事故-2

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ヒートショック太陽パネルの飛散事故
世界的に見て日本は、入浴中の溺死や病気による死亡が非常に多いとされています。2018年度の不慮の事故で亡くなった65歳以上の高齢者は12958人でした。
このうち浴室での溺死が5029人、約39%です。東京都の調査では、1月が最も多く、2・11・12月を合わせた冬季では60%を超えているのです。ただこの数字には、入浴中での脳卒中による突然死などは含まれていません。2015年の厚労省の調査では、病気なども含めた入浴中の死亡者数は年間で1万9千人以上との推計が出ています。
その多くは、自宅の浴槽で起きていると考えられているのです。特に65歳以上の人たちが突出して高いのです。日本は浴槽に体を沈める習慣があることに加え、入浴による「ヒートショック」が大きな要因と指摘されています。
気温が低い冬場、暖かい居間などから、寒い脱衣室へと移り、熱い浴槽に入るまでの温度の変化が大きくなると、入浴中に亡くなる方が最も多くなります。
欧米では、住宅の中はどこもほぼ同じ温度になるような空調をしているところが多いいのですが、日本人の住まいに対する考え方は昔とあまり変わっておらず、冬、寒いのは当たり前であり、我慢すればいいのだと思う精神論に偏りがちです。
暖房をしていないトイレや脱衣場との温度差が5度以内にであれば、人は『不快』と感じにくくなるのです。
ただ、北海道では、住まいの断熱性能が高く全館暖房が普及しており、バス・トイレも含めてどの部屋も均一にあたたまるようにしているため、死者数が少ないという結果になっています。
台風で太陽電池パネルの飛散事故が発生しています。
2017年10月、長野県上田市にある住宅の住民は、朝方、自宅の敷地内に太陽電池パネルが1枚落ちているのを発見。自宅の屋根を見るとパネルが1枚なくなっており、谷部の屋根材が一部破損していました。
実は昨夜に台風21号が関東地方を通過したのでした。台風の強風でパネルが外れ、屋根材にぶつかりながら飛ばされたのです。太陽電池パネルは2000年に新築した住宅に、2012年に設置したものです。
同日、兵庫県三田市内でも大規模なパネルの飛散事故が発生。市内にある藍中学校、本庄小学校、ゆりのき台小学校の3校が被害にあいました。台風の強風で、既存の3階建て校舎の勾配屋根に載せたパネルと横桟が飛散。飛散したパネルの枚数は3校の合計で162枚。設置数の半分以上にのぼります。
藍中学校ではさらに、脱落したパネルが校庭を飛び越え、集会所の屋根を破損させる事故も起こしています。最大瞬間風速は毎秒35mで、基準風速の同34mとほぼ同じ数値でした。
宮崎市内では、集合住宅の陸屋根に設置したパネルが強風で架台もろとも飛んで、約60m離れた戸建て住宅に衝突する事故が発生。2016年9月に台風16号が九州地方を通過した、午前3時ごろの出来事です。戸建て住宅に架台とパネルがぶつかり、2階寝室の窓や雨樋、フェンス、物置などが破損したのです。




外壁落下事故後の問題マイホームが事故物件に
2019年4月、熊本市の県道を走っていた車に、建物の外壁の一部が窓ガラスを突き破り、運転席に乗っていた女性が左腕を打撲し、後部座席に乗っていた女性が左足の指を切る軽傷を負いました。
落下した外壁は築5年目の賃貸マンションのタイルのパネルが剥がれ落ちたのです。30Cm角ほどのパネルが2枚。事故時は強風が吹き荒れていたのです。
実は、このマンションの外壁は、2017年7月にもタイルパネルが落ちていたのです。その後、落下する恐れがあるパネルは剥がしたそうです。
2016年4月の熊本地震の後、目視と打診での点検では問題はなかったようです。
問題なのは事故の保証と、今後の対策です。この場合は賃貸マンションゆえに、持ち主の責任ですが、分譲マンションとなるとそう簡単にはいきません。
今回のように原因がはっきりしない場合は、建設会社との話し合いになります。分譲マンションとしても金銭問題につながります。
それでなくても厳しい積立金を崩すのは、住民としては納得できないでしょう。
ある男性が、マイホームの完成を心待ちにしていました。あこがれの洋風の家を建てるため、業者に契約金を渡し工事が始まりました。
工事半ば頃のこと、工事現場で事件が起こりました。請負業者によると、2019年7月、作業員らが工事中の家で仕事を始めようと2回に上がったところ、見知らぬ男の首つり自殺現場を見つけたのです。
その後警察が現場で遺体を確認し調査をし、遺体は30歳前後の男性であろうとの事。
自殺した男は、サンダルを建築現場の足場材料の側に脱ぎ捨て、その後に家の2階によじ登り内部に侵入。屋根の重みを受ける材木の部分にロープをかけ、それで首をつり息絶えていたという。
あこがれのマイホームを夢見ていた男性は、「お宅で自殺者が出た」と電話で聞き大ショック。完成すらしていないマイホームが事故物件になったことに大変な衝撃を受けたという。
男性は「こんな家に住めるわけがない」「完成したらすぐに売りに出す」と業者に伝えたというが、オーナーさえも暮らせぬ事故物件に住みたい人は、果たしているでしょうか。多分現場は、誰もがすぐに侵入できそうな、管理の甘い現場だったに違いありません。


外壁落下事故ー2シロアリに弱い基礎断熱
2016年7月、大阪府内にある9階建て築25年のマンションの西側外壁タイルが剥がれて1階店舗のビニール製の庇を突き抜けて歩道に落下したのです。
幅1,4m高さ60cmの大きさのタイルパネルが庇の下にいた通行人に直撃し裂傷を負わせる結果となりました。
詳しく調査した結果、タイルに割れが発生していて、躯体とタイルの間に隙間がありました。原因は経年劣化によるものでしょう。
外壁タイルの検査は定期的には行われていたものの、3年に1回だけであり、しかも目視という方法ゆえに、少し高い所はしっかりと確認はできなかったのです。
2008年4月、建築基準法施行規則の改正があり、定期調査報告における外壁タイルの具体的な調査項目、調査方法、及び判定基準が「国土交通省告示第282号」に定められ、外壁の全面打診調査が義務付けられました。
その方法とは、手の届く範囲では打診、その他を目視で調査し、異常があれ ば全面打診等により調査しなければならず、加えて竣工、外壁改修等か ら10年を経てから最初の調査の際に全面打診等により 調査する箏が義務付けられたのです。
2013年の省エネ法の改正を契機として、基礎コンクリートからの熱損失を軽減する基礎断熱工法を採用する住宅が増えています。
しかし「日本しろあり対策協会」の調査によると、ひとたび基礎断熱材がシロアリの被害を受けると、6割以上で1階の柱や2階以上にまでの被害が及んでいたという実態が、明らかになりました。
基礎断熱に使われる断熱材がシロアリの侵入に対して防蟻作用が無いため、断熱材のシロアリリスクが指摘されていました。外断熱住宅では、基礎の外側にポリスチレンフォームという板状の断熱材を付けています。
その断熱材がシロアリに進入路になるのです。基礎の断熱材から侵入したシロアリは、外壁側に貼ってある断熱材の中を侵入して、上部へ上がっていき、1階の天井裏にある梁に被害を及ぼします。
シロアリの被害にあっているかどうかを点検するのは「床下点検口」ですが、基礎外断熱住宅の場合、床下を点検してもシロアリの被害にあっているかどうかをチェックするのが極めて難しいのです。
断熱材の中を移動するため、内装材をはがさない限り、シロアリの蟻道を発見するのが極めて難しいためです。
しかも、基礎外断熱を施工している会社の中には、後から基礎コンクリートの表面に断熱材を貼っている会社がありますが、断熱材とコンクリートの間をシロアリが入り込む可能性があるのです。