環境問題トラブル

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奈良のホテル計画裁判別荘の眺望権争い
2018年12月、奈良公園南端の奈良県有地で進めるホテルなどの整備計画事業に対して、地元住民らでつくる「奈良公園の環境を守る会」が、都市公園法などの趣旨に反するとして、建設の差し止めなどを求め奈良地裁に提訴しました。
事業計画によると、不動産会社のヒューリックが2018年12月中に着工予定でした。
今までの経緯として、2017年4月、奈良女子大名誉教授ら住民団体が「古都・奈良の文化遺産を守る会」を設立。ところが後日、県が主催する有識者の検討委員会は、「景観が破壊されることはない」と発表したのです。
2017年6月、県は文化庁に申請していた公園の現状変更が許可されたと発表し、県は事業計画を推し進めます。
2017年7月、事業計画に反対する弁護団が発足。
2017年12月、「奈良公園の環境を守る会」が、施設計画を許可しないよう求める意見書を県に提出。
2018年2月、文化遺産の保存に携わる「日本イコモス国内委員会」が整備事業に対し、市民に十分な説明などを求める提言を発表。
2018年09月、奈良市内で「奈良公園の環境を考える」シンポジウムが開催。県が進めている建設予定地は手つかずの自然が残っている場所なので、今後も今の自然を守り活かすことが大事であるとの意見がでています。
ある別荘地での事例です。原告は木曾駒高原に木造平屋建ての別荘をたてました。ここからの木曾御岳山の山並みが重要な眺望でした。
ところがその後100m程離れた場所にリゾートマンションが建設されたのです。

そのために原告は眺望を阻害されたとして、裁判所に訴えました。結果は訴えを認めたものでした。

判断の理由として、被害を受けた別荘からの眺望は、格別の価値を持っている事と、この別荘の建物は、眺望の利益享受が重要な目的として建てられている事。

そして眺望阻害者は、被害別荘から100m程離れた所に、付近では見られないような10階建のリゾートマンションである事と、被害別荘の持ち主がこれまでに享受してきた眺望に対して何の配慮もせず又、事前の説明をもしなかった事。

以上により、1992年大阪地裁は、眺望阻害は一般的に是認し得る限度を超えた不当なものとして、阻害者に損害賠償を命じる判決を出しました。



いい加減な売買契約書眺望権の犠牲
大阪の芦屋でマンション業者が、交通の便は悪いが、素晴らしい眺望をセールスポイントとしてマンションを売り出しました。その業者は南側に小さな土地を所有していましたが、購入者に対して、「そこには高い建物は建てない」と約束していました。
しかし
マンション
業者は南側の土地を大きく買い進め、別の業者に売ってしまったのです。その売買契約書には「2階以上の眺望を阻害する建物は建てない」旨を書き加えていました。でもその祭に、住民と話し合えば建築制限条項を無視出来るような説明を行なっていたのです。
しかし、
南側の
土地を買った業者は住民と話し合う事もなしに5階建てのマンションを建ててしまったのでした。
眺望の被害を受けた住民達は
南側に建てた業者とは結果的には、和解をしています。でも土地を売ったマンション業者に対しては損害賠償の訴えを起こしました。
1993年大阪地方裁判所は住民の訴えを全面的に認め、損害賠償の支払を命ずる判決を下しました。
理由としては、土地を売った
マンション
業者は、建築制限付きの売買契約書を公にせず、眺望阻害と同視すべき行為を行なったものと判断したのです。
札幌市内の分譲マンションで眺望権を争った例があります。
眺望の良さを売りとした15階建てのマンションの13、14階を購入した住民が訴えたのです。
実はその翌年に同じ不動産会社が、60m南側に別の15階建てのマンション計画を発表し、その後完成させたのです。

住民らは、「眺望権」ではなく「信義則違反」として争いました。2004年札幌地裁は原告の一部を認めて不動産会社に賠償命令を出したのです。

ただし問題はそれだけでしょうか。それらのマンションの北側にあるであろう住宅等の眺望や日照の権利は無視されるだけなのでしょうか。

新しくマンションに入る人は、その建物が、近隣住民の色々な権利にたいしての犠牲の上に成り立っている事を知る必要があるでしょう。



眺望権を無視された例海の眺めを遮る
2000年、大阪市浪速区に建つ地上28階建ての超高層マンションを購入した住民は、約80mの距離で同じデベロッパーの近鉄不動産が2005年に建てた地上39階建てのタワーマンションのために眺望が悪化したとして、慰謝料の支払いを求めた訴訟を起こしました。それに対して、2008年6月大阪地方裁判所は原告側の請求を棄却しました。
先に建てられたマンションのパンフレットには、「上層階の東方向を望む住戸からは、生駒山を背景に上町台地を望む眺望をお楽しみいただけます。」などの文句が書かかれていました。
そして原告は眺望に魅かれて上層階を購入したが、購入時に新しいマンション計画についての説明はなく、近くに超高層マンションが建てられることがわかっていれば購入しなかったと主張しました。
しかし裁判所は眺望権よりも、売買契約の手続きに問題があったことに重点を置いて判断しています。裁判所が重視したのは、売買契約締結前に近鉄不動産が行った、将来眺望が変わる可能性があることを明記して承諾を求める重要事項説明でした。
売買契約書の特約条項には、「・・・本マンション南側道路をはさんだ近接地およびOCATをはさんだ東側近接地は開発予定であり、本マンションの眺望、日照条件、交通量等に変化が生じる場合があること等、周辺環境を充分調査確認のうえこの契約を締結し、以後この環境について売主および関係者に対し何ら異議を申し立てないこと」の記載がありました。
裁判所は、重要事項説明を受けた段階で原告が特に質問をせず、異議も唱えなかったと指摘して、説明内容に納得して売買契約を締結していると認定しました。
日影規制もない都心の商業地域に建つ超高層マンションでは、“眺望権”を認める理由は少ない、との判断でしょう。しかし眺望権をめぐる裁判所の判断はまちまちのようです。
神奈川県真鶴町の相模湾を望む立地に別荘をもつ男性は、その海側の隣地に高さ8mの住宅が建つ事に対して、眺望権を奪うものとして建築の差し止めを求めていました。この建物が建つと海の眺めを遮られることになるのです。

2009年4月、横浜地裁小田原支部は眺望の利益を認め、建築の差し止めを命じる決定をしました。
裁判官は「良好な眺望は法的保護に値する」と認定、また隣地の所有者が建築内容について男性側と事前に協議をしていないなどにもふれています。隣地住宅の工事はすでに一部始まっていました。

しかし2010年12月、横浜地裁小田原支部は、建築差し止めを認めた同支部の命令を取り消しを決定。
それによると、
隣地住宅側は差し止め命令後、当初の計画より横幅を約30メートル短くする案を提示。

男性側は「縮小しても、最も美しい眺望は阻害される」と主張したが、決定内容
は「真鶴半島方面の眺望はほとんど遮られるが、相模湾の水平線などは一望でき、我慢するべき限度の範囲内と言うべきだ」として退けました。