欠陥住宅最高裁判決 | 欠陥住宅最高裁判決-2 | ||||
2002年9月、最高裁は欠陥住宅に対して、画期的な判断を示しました。 2階建ての戸建て住宅で、「全体にわたって極めて多数の欠陥個所があるうえ、主要な構造部分について本件建物の安全性および耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥が存在する。技術的、経済的にみても、建て替えるほかはない」と、東京高裁は事実認定していました。 それを最高裁まで争って、2002年9月最高裁は、建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合、注文者は請負人に対して、建て替え費用相当額の損害賠償を請求することができるとの判決を下しました。 これまで、下級審の認めないとする判決の根拠は、「建物その他土地の工作物を目的とする請負契約については目的物の瑕疵によって契約を解除することができない」とする民法635条ただし書きを、民法634条(損害賠償請求権)に類推適用していました。 請負人にとって過酷で、かつ、社会経済的な損失も大きいという理由からです。 しかし、最高裁は「重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合、建物を収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく、また、そのような建物を建て替えてこれに要する費用を請負人に負担させることは、契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって、請負人にとって過酷であるともいえないので、建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても、民法635条ただし書の規定の趣旨に反するものとはいえない」と判断しました。 | 建物に欠陥が見つかった場合、どの程度なら設計・施工業者に損害賠償を請求できるのかが争われた訴訟の差し戻し後の上告審判決で、2011年7月最高裁は、「現状では危険がなくても、放置すれば将来的に住人らの生命や身体、財産に危険が生じる程度で足りる」とする判断を示しました。 訴えていたのは、大分県別府市に1990年建設された9階建て店舗付き賃貸マンションを購入した元オーナーの男性。ひび割れや配水管の亀裂、バルコニーの手すりのぐらつきがあるとして、1996年に東京都の設計会社と同県の建築会社を相手取り、不法行為責任に基づく損害賠償を求め提訴。 一審の大分地方裁判所は、設計者と施工者に瑕疵担保責任があるとする判断をしました。被告はこれを不服として控訴します。 二審の福岡高等裁判所は、直接の契約関係にない購入者に対して設計者と施工者は瑕疵担保責任を負わないとし、また、建物の瑕疵は構造耐力上の安全性を脅かすほどのものではなく違法性は強くないとして、設計者と施工者の不法行為責任も否定しました。今度は購入者側が上告し、そして最高裁が2007年、二審判決を破棄し、福岡高裁に差し戻したのです。 今回の最高裁の判決は、2007年に示した「建物としての基本的な安全性を損なう欠陥があれば賠償を認める」という基準をより具体化したもので、欠陥住宅による被害を幅広く救済する内容です。 判決は具体例も提示。放置した場合に鉄筋の腐食、劣化やコンクリートの耐力低下で建物の倒壊につながるような構造上の欠陥のほか、外壁がはがれて落下したり、漏水、有害物質の発生で住人の健康を害したりするケースなどを挙げた。ただ、建物の美観や居住環境の快適さを損なう程度では該当しない、としています。 |
レオパレス防火対策問題 | ミサワホームの認定違反 | ||||
2019年2月、レオパレスによるアパートに関して、各住戸の壁(界壁)が屋根裏まで達していない、或は防火上必要な仕上げになっていないなどの、建築基準法違反が発覚。 施工不備の指摘を受けていながら、対応を怠った事、界壁の内部充填材に国土省告示の仕様に適合していない物を使用しているなど、建築基準法の規定を満たしていない施工不良物件が1324棟確認されたと発表。 界壁が天井裏まで達していなければ、火災が起きた場合は、隣の住戸に延焼が食い止められません。 問題物件の入居者は1万4443人に達し、そこでレオパレスは、特に天井の耐火性能が不足する641棟の7782人に速やかに転居を要請。また、他の問題物件の入居者全員にも退去を促すという異例の対応に踏み切りました。 同社は補修工事費用を特別損失として計上するため、2019年3月期の連結純損失が388億~400億円に拡大する見通しです。 2018年9月に集団訴訟が行われることとなり大きな話題になったレオパレス問題ですが、現在は判決まで1年以上かかると言われる集団訴訟の真っ最中なのです。他にも、「家具家電未払い請求集団訴訟」「建物メンテナンス契約不履行集団訴訟」「プロパンガス設備工事代金返還請求集団訴訟」と、問題を抱えています。 サブリースに端を発したレオパレス問題ですが、アパート経営の難しさが浮き彫りになりました。 | 2019年1月、ミサワホームは自社が供給した木質系パネル住宅で、型式認定を受けた仕様に適合しないものが全国で149棟あったと発表。 建築物の型式適合認定は、建築基準法の構造、防火、設備及び一般構造にわたる幅広い規定に適合していることを予め認定するものです。 標準的な仕様書で建設される住宅などの型式について、一定の建築基準に適合していることをあらかじめ審査し、国が認定します。 型式適合認定を受けていれば、個々の建築確認時の審査が簡略化されるのです。 ミサワはまぐさや小壁、屋根梁といった鉛直支持部材が設置すべきものと異なる寸法の部材を使用していたのです。 例えば、構造用集成材のまぐさが、型式認定に適合するものより寸法が小さくなっていました。 18年9月、ミサワはこの問題を国土交通省に伝えています。ミサワホームは改修を原則に対応する方針で、不適合となった建物は北海道の23棟が最多で、新潟県の17棟、東京都の13棟。冬季の改修は難しいため、全ての建物を改修するまでに、おおよそ3年が必要となるようです。 型式適合認定に合わないたてものは、建築確認時にすべての審査を受けなくてはならず、また改修後の完了検査をどのように審査出来るのかが疑問です。 |
続・マンション確認取り消し事件 | 電気室浸水事故 | ||||
「ル・サンク小石川後楽園」事件その後 東京高等裁判所が両社の控訴を棄却後、建築主は上告を申し立て、最高裁判所に受理されました。 そして、最高裁が都審査会の裁決の違法性を認めなかった場合の「予備的請求」として、建築主は事業完遂に必要な金額約107億円3418万円を都に請求。 2019年5月9日、東京都を相手取り国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に起こしました。 建築主は予備的請求の原因について、「指定確認検査機関が必要な注意義務を尽くさず、漫然と変更確認処分を行ったことについて、都が責任を負う立場にある」と主張。 結局2019年8月16日に最高裁判所が上告を退けたことで、建築主の敗訴が確定したのです。 建築主の主張も理解出来ます。 建築確認業務が民間会社にも解放された結果、民間の検査機関のいい加減な審査、或は目をつぶる姿勢などが問題になっています。姉歯事件で問題はピークになりました。 しかし、国が認めた事柄ゆえに、国の姿勢は民間審査機関を守る方向へと進んでしまったのです。 | 2019年10月関東、東北地方を襲った台風19号では各地に大きな災害をもたらしました。 そして感心を持たれたのは、川崎市の武蔵小杉駅前のタワーマンション、フオレストタワー。 この台風で駅周辺では浸水被害が発生。これにより、フオレストタワーが停電になりました。原因は地下に設置した電気室やポンプ室に水が浸入したためです。雨水を一時的に貯めておく貯水槽が満杯となり、電気室の方にあふれた結果です。 そのためエレベーターはもとより、ポンプが稼働しないために、上まで水をくみ上げることが出来なくなり、結果、トイレに水を流すことが出来なかったのです。当然水も飲めないし、料理も出来ません。ガスで火をつけ料理したとしても、レンジフードが動かないことで、部屋の中は煙で一杯になります。換気も出来ません。 1982年7月、2000年9月の豪雨が東京を襲い、それにより神田川流域で約114haが浸水し、東京都中野区及び同杉並区を流れる妙正寺川及び善福寺川付近で約3,700戸の浸水被害が発生しました。この時川沿にあったマンションが浸水し、停電になったのです。 今回のケースでは以前の教訓が全く生かされていません。 浸水の恐れのある地域においては、電気関係の部屋は最低でも地上に持っていくべきだったのです。 |
欠陥建物事例ー1
欠陥建物事例ー2
欠陥建物事例ー4 も参照して下さい