計画的な換気 | 計算上の換気が危険 | ||||
家全体を高性能な断熱材で隙間無く包んでも、開口部からの熱ロスは大きいのです。また、結露も発生します。 家全体から逃げる熱の30%~40%以上は窓や出入口など、特にガラスからの熱損失であるといわれています。そこで、寒さの厳しい地方では二重サッシュ或は、二重ガラスにして断熱性を向上させます。又、使う部屋だけを必要な時にだけ暖めるという方法は、同じ建物内では温度差を作る事になり、結露の原因やカビ、ダニの発生に繋がります。冷房も暖房も部屋ごとではなく、家全体に行わなければ効果がありません。 そこで、快適で健康な住まいを造るには、温度差の生じない全室暖房を考えるのがよいとの方向へ進みます。 ただし、冷暖房を使う住宅では、床下や天井裏、小屋裏、壁の中も、室内気で通気や換気を行わなければ、問題が発生する可能性が高くなるのです。 当然、廊下やトイレ、脱衣場やお風呂まで暖めようとすれば、いままで以上に大きなエネルギーが必要になり、大きな経済的負担を覚悟しなければなりません。 しかし、高断熱・高気密住宅では、さほどエネルギーも必要にならない事がよく言われています。がしかし、高断熱をし、気密性も高めると、熱や空気の出入りを制限する事になり、屋内の空気がだんだんと汚染され、シックハウスの問題ともなり、また結露の原因にもなります。 自身が、あるマンションを訪ねた時の話です。冬、赤ちゃんのいる若夫婦の住宅を尋ねて玄関に入った時、中は夏のような暑さで、開けたスチールドアの内側は結露水が斑点のように一杯ついていたのです。当然、壁の換気用レジスターは閉まっている状態でした。 つまり高気密・高断熱にすればするほど換気が必要となります。ただ換気をするのではなく、計画的な換気をする必要があるのです。 | 高気密・高断熱の住宅を建てる場合、しっかりとした換気計画が必要です。単に計算上必要な数合わせでは、室内の空気が滞留してしまう恐れがあります。 換気計画の設計が悪いと、建材の接着剤等に使用されるホルムアルデヒドなどの有害物質が人体に悪影響を及ぼしたり、カビが付着しやすくなる可能性があります。 近年建築された家は、そのほとんどがホルムアルデヒドの数値は安全なものに抑えられていますが、使用している家具からホルムアルデヒドがひどく出てくる場合もありますから、計画換気を実践しなければなりません。 高気密・高断熱の住宅は、その性能のため、一旦熱が入り込むと抜けにくいという性質があります。 換気システムが正常に働いていない場合、夏場、熱気が室内に篭り、高い気密性のため抜けていかず、エアコンを稼動せざるを得なくなってしまいます。 そのため、夏場は太陽光が入り込むとそこから生じた熱がこもってしまい暑くなります。 冷房効率が低下し、電気料金が高くなってしまう恐れもあります。 また、温度と同じく湿気もこもる事になり、24時間換気をしていても放置しているとカビの原因になる可能性があるのです。 換気設備があるからと言って、油断は禁物です。 |
空気が漂う危険 | 全熱交換換気の疑問 | ||||
換気をしっかり行う事が大事ですが、隙間から空気が入り込むような家では、無論キッチリとした換気は出来ません。 空気の取り入れ口とその空気の排出口が当然必要となります。部屋の対角線上にお互いがある事が望ましいのです。なかなかプラン上出来ない事が多いのです。しかも、給気口と排気が近くにある住宅も多いのです。 そうなると、給排気の通り道から外れた所の空気はその場で漂う事になります。或は、給排気の位置は理想的でも、家具等で空気の通り道を塞いでしまっている部屋も多く見られますし、ベッドの下なども中々換気が出来ません。 空気が流れないところは、ホコリも溜まるでしょうが、カビが生える原因ともなります。ましてや、冷気を嫌がって、給気口のレジスターを閉めてしまえば、部屋自体の空気が淀んでいきます。 ですから、計画的換気がプラン上で確認されても、計画的換気が実際に行われているかは違います。換気扇があるから大丈夫と思ったら大間違いです。 | 最近の住宅では換気システムに全熱交換器を使用する例が増えています。 全熱交換器の機能としては、熱交換器により、換気の際に捨てられてしまう室内の暖かさや涼しさを再利用しながら換気します。 約5~8割の熱エネルギーを回収でき、夏期・冬期の冷暖房負荷を低減し、省エネ換気が可能とのふれこみです。つまり、外気が0℃、室内が20℃の場合、外気が14℃になって室内に入ってきる事になります。 しかし欠点もあります。全熱交換器は、湿気と一緒に匂いも戻してしまうのです。 匂いの発生するトイレと、大量の水蒸気が発生するお風呂は使用出来ませんが、その他の部屋の様々な臭いは室内に充満してしまいます。 そして、熱交換器は、冬場の寒冷地では凍結防止のために霜取りヒーターを用います。電気代の高い日本でヒーターを使い、モーター2台を回して熱交換することが、本当の省エネになるでしょうか? また、外気温度がそれほど低くならない地方で、熱回収するために電気を2倍以上使うメリットはどのくらいあるのでしょうか。 |
細菌の拡散 | ダクトはホコリだらけ | ||||
全熱交換での換気においては、室内で発生したさまざまな菌がダクト内に充満しています。 世界的に有名な話として、アメリカでは在郷軍人病というお年寄りや体力のない人が、空調機の噴き出し口からの細菌感染で亡くなる事故がありました。 空調機の噴き出し口からの細菌感染で亡くなる事故があったのです。日本の病院での院内感染、乳幼児の細菌感染などは、空調ダクトを通じて細菌が発生源の部屋から病院全体に拡散して起きるのです。 熱交換換気とは、室内の空気を循環する事ですから、 汚染された空気をいかに防ぐかは、中に組み込まれているフィルターが頼りなのです。 フィルターの性能、メンテナンスがとても重要である事は間違いありません。ただ、フィルターの性能を上げると、早く目詰まりするために頻繁なメンテナンスが必要になります。 そのままにしておくと、換気能力が落ちていき、次第にダクト内に細菌が充満し、各部屋に流れ込む事態となるのです。 | ある住宅の廊下で脚立に乗って天井内の熱交換型換気設備のパネルを開くと、熱交換素子のフィルターがほこりで真っ黒な状態になっています。 そして、ダクトの中を見ると、そこにはほこりが吸い込まれている状態です。 最初の頃、ダクトには微小な粉塵などが入り込みやがては大きくなって、ホコリ状になっていきます。しかもそれが大きくなると空気の流れが少なくなります。ホコリにはやがてカビも発生します。 よって各部屋には必要な空気量が入ってこなくなります。しかも微細な粉じんやカビも紛れ込んでくるのです。 もう一つは、ダクトの経路は決してまっすぐではありません。色々な天井内の障害物をかわしているので、結構曲がりくねっているのです。そのため空気の抵抗があり、曲がり角でほこりが溜まりやすいのです。 点検においてはそこまで見る事は出来ません。 又、外からの空気の入口である給気口のフィルターも結構目詰まりするのです。空気の入口で必要な空気量が入ってこないと、住宅内の換気はお粗末なものとなります。 結局窓を開ける事になり、気密住宅の意味をなさなくなります。 |
危険な換気ー2 を参照して下さい