危ない自治体ー2


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インフラ整備の危機区画整理の取り消し判決
近年、世界の国々でインフラ整備の問題が指摘されています。日本も例外ではなく、一般の人は意識が薄いですが、水面下では深刻さを増しています。インフラの老朽化点検は2014年度から5年に1度義務づけられ、2019年3月末で一巡し、4月から2巡目に入ります。このうち最も深刻なレベル4と判定されたのは580か所あり、そのうち273か所で修繕や架け替え、撤去に着手していますが、307か所は未だ手つかずの状態です。その中でも36%にあたる210か所は工事の見通しが立っていません。理由としては「財源不足」が最も多く96か所です。
老朽化のインフラを撤去しようにも、不便だという住民が反対するケースが多く、58か所は調整が難航しています。ほかにも技術系職員の不足や隣接自治体との調整不足などもあります。現状、床板が抜け落ちたり、橋脚が倒壊したりしている橋もありますが、住民が無断で通行する場所もあり、着手が遅れるほど倒壊や事故のリスクが高まります。北海道夕張市ではレベル4の橋が1か所あり、予算措置ができず、工事のめどは立っていません。全国最多の12か所の橋がレベル4と判定された奈良県十津川村では、修繕を終えたのは2か所のみで、10か所は見通しが立たないのです。山口県長門市では、山間部の長さ8メートルの橋が撤去出来ない状態であり、市によると、利用は1世帯だけですが、反対しているため先に進むことが出来ません。
東京都の羽村市は、JR羽村駅西口付近に広がる宅地など約42haを、区画整理に伴う道路の拡幅や公園の整備などで安全で快適な街づくりができるとして区画整理を計画しました。
370億円の事業費を投じて道路の幅を広げるほか、1000棟近くの建物を移転させ、2021年度末に完成予定としており、既に一部の工事に着手。
事業費には国や都の補助金も含まれるますが、約7割を市費で賄う計画であり、区画整理に伴う道路の拡幅や公園の整備などで安全で快適な街づくりが出来ると考えています。
しかし地元住人からは、道路の拡幅や延伸は歴史的景観を破壊し住環境を悪化させると主張。さらに、道路整備は多摩都市モノレールが延伸された場合の用地確保が目的だったとして、延伸事業が頓挫している現状では道路整備の必要性が無くなったと考えています。
そして2015年6月、事業に反対する地権者など約120人が市を相手取り14年12月の事業計画決定の取り消しを求めて東京地裁に提訴
その結果、2019年2月、東京地方裁判所は
市の事業計画を取り消す判決を言い渡しました。
「市の歳入の規模が210億円から240億円程度なのに対し、事業計画では支出が77億円以上になる年度があり、非現実的だと言わざるをえない」と指摘。
また、「2022年3月までとしている事業計画の期間についても、進捗状況からかけ離れ、到底、実現不可能であり、計画変更は違法だ」として、市が変更した事業計画を取り消す判決を言い渡しました。



生活橋の存続問題居住の制限計画
和歌山県田辺市にある長さ60mの秋津橋は、1971年に建設され橋脚のコンクリートが剥離していました。
2014年度から義務付けられた5年に1回の定期点検の結果を受けて、2015年度に実施した老朽化した橋の定期点検の結果、緊急措置が必要な「IV」と判定されました。
市は橋を通行止めにするとともに、廃止を検討。
秋津橋の上流と下流合わせて約500mの区間には、国管理も含めて5本の橋が架かっており、秋津橋を廃止しても、100mほど迂回すれば他の橋を渡ることができるので、影響は小さいと判断し、2016年3月から通行止めにしました。
しかし近隣住民からは、橋が無くなれば不便になることは間違いないと、市の撤去方針に対して、反対の声が上がりました。
秋津橋の100メートルほど下流にある田辺バイパスの側道には、耐震基準を満たした橋があり、他にも上下500メートルほどの区間に歩行者のみが利用できる橋が2本あります。秋津町内会は、歩行者用を含む老朽化した3本の橋のうち、自動車で通行できる秋津橋だけは残してほしい、と市に要望書を提出していました。
そして、2019年2月、市は補修して存続させることに決めました。秋津橋の改修事業費は6260万円
2018年7月の西日本豪雨で北九州市内の約400カ所で崖崩れが発生。門司区奥田の市街化区域では、崩れた崖の下に立っていた住宅2棟が全壊し、住民2人が死亡、1人が重傷を負いました。
今後も老朽化した住宅が土砂崩れなどに襲われる将来の危険性を無視出来ないと考えた市は、都市計画の見直しに着手。そして、高齢化や人口減にあえぐ北九州市は、災害発生の危険性もある一部の斜面住宅地について、居住を制限する検討に入りました。
都市計画区域上の区分を見直し、開発が制限される市街化調整区域に編入するのです。インフラが整った中心部居住を促すことで、コンパクトシティーを目指します。2040年の人口が現在より17%減の78万人となる推計を踏まえ、公共インフラ整備を中心部に集中させる狙いもある。
市は昨年末から人口密度、高齢化率、交通利便性、土砂災害区域の指定状況など34の指標を使って市内全域を分析。それらを点数化し、調整区域に編入すべき地域として門司、八幡東、若松の3区などで5カ所以上を選定。福岡県などとの調整を経て、実現は21年度の見込みです。
編入対象は数百世帯以上とみられます。市によると編入後も居住は続けられ、不動産売買もできるが、市の許可がなければ再開発や建築行為はできず、新規入居は制限されます。今後は空き家の整理も含め、対象世帯の支援策が課題になります。
人口約8万人の京都府舞鶴市も2017年から、調整区域への編入議論を始めました。



所有者不明土地問題
土地所有者の住所や生死が判明しない、土地の「所有者不明」問題が、日本各地で表面化しています。
2015年に鹿児島県が行った調査では、名義人が一致せず、相続未登記が疑われる面積は5万9870ha、県内農地の38.2%を占めました。そのうち、農地所有者の死亡を住民基本台帳で確認できた確実な相続未登記農地は、3万2900haで、県内農地の21%
農林水産省は2016年4月、初めて全国的な相続未登記農地の実態把握に乗り出した結果、登記名義人が死亡していることが確認された農地は、47万6529ha。さらに、登記名義人の市町村外への転出などにより、相続未登記となっているおそれのある農地は45万7819ha。合計面積は約93万haに上り、日本の全農地面積の約2割に達していました。
そのうち、農地として活用されていない遊休農地の面積は約5万4000haで、遊休農地面積全体の約4割を占めるのです。全国の私有地の2割はすでに所有者の把握が難しくなっています。面積に当てはめると、四国はもちろん、九州を上回る規模なのです。
そのため国が農地集積や耕作放棄地の解消を図る目的の農地中間管理機構の取り組みに支障が出ています。
所有者の死亡後、相続登記がされないことで、林道の整備や間伐の実施などについて相続人の同意を得るにも連絡がとれず、管理上の問題となるケースも多発。
また、道路の新設や拡張、都市計画等にも影響があり、公共事業の大きな妨げになっています。
例えば東京新宿駅前の「しょんべん横丁」と言われる区画では、地区開発が出来ないままとなっていますが、ただここは今、観光地と化し、結果はむしろ良かった事ではありますが。