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別荘の景観の侵害道路拡張裁判
大分県の由布岳が望める別荘地において、景観の侵害に対する住民同士の争いが起き、2013年9月土地や住宅、別荘などを持つ約20人が大分地方裁判所に提訴しました。
被告は約1700m2の土地を持ち、太陽光パネル約160枚を庭に、約50枚を屋根に、太陽光パネル損傷防止用フェンスを庭の外周にそれぞれ設置したのです。
そして原告は太陽光パネルとフェンスを撤去し、景観侵害の慰謝料として1人当たり1日1000円を設置期間分払うことを求めているのに対して、被告は請求却下を主張しています。
この別荘地管理規程には「管理会社の承諾を得ずに営利事業を行わない」「広告看板、ネオンサインの設置など別荘地の環境、美観を害する行為を行わない」、工事規程には「敷地の境界には塀や垣根などを設けてはならない」「規程に違反した場合は損害賠償責任がある」などの規制条項が盛り込まれています。
被告は答弁書で、「原告が主張する景観利益は漠然としている。景観を害するという主張は主観的なもので、パネルがどこから見た景観にどう影響するかもわからない」「パネルの設置は管理会社に説明して了解も得ている」
「フェンスは境界識別用ではなくパネルの損傷事故防止用なので、工事規程に違反しない」などと反論。
東京杉並区のJR西荻窪付近の駅前道路が、都市計画道路に指定されているために、道路拡張を実行する事になるようです。
区の説明会もありましたが、地元住民は反対意見が多く、不安な日々を送る毎日です。
そもそもこの道路拡張計画は、72年前の昭和22年に決定されたものです。区の説明には、道路拡張にて道路が火除け地になる事を協調しますが、それは阪神大震災後に考え出されたもので、当時の考えではありません。
都市計画道路の全長は、1,070メートルです。過去の実績等で考えると300メートルが5年かかると、全長では15~30年はかかります。
出来上がればトラックの車両等が多くなり、地域の分断が始まります。
静岡県の場合ですが、道路拡幅都市計画変更に対する裁判が行なわれました。訴えたのは拡幅される地域に住む住民達です。
1997年静岡県は、県道の一部を11mから17mに広げる決定をしました。計画の変更理由は「現在人口が減っている地域程、将来その分多くの人口を収容することが出来るから、人口増加が見込まれ、それに対応して交通量も予測出来る」という事でした。
2005年10月東京高裁は「交通量予測は合理性を欠く」として、都市計画変更決定を違法とする判決を出しました。原告側は「低い需要の道路が造られる流れに歯止めをかける」と評価しています。
都市計画道路は「人口はこれから必ず増加する」とした検証されない理想をデーターの元に計画を進めてきた事が問題なのです。これはあたかもバブル時期、世間は「経済は必ず右肩上りに上昇する」と決め付けていた事と重なります。
計画にはもっと現実的な根拠を掲げていただきたいものです。



鎌倉眺望裁判奈良公園ホテル計画裁判ー2
2001年6月東京高裁判決、神奈川県鎌倉市に1972年から借地に住宅を建てて住んでいた住民は、1996年隣地にマンション計画が立ち上がり、1999年にマンションが出来上がり、計画者と建設会社に対し景観、眺望の侵害により1000万の損害賠償を提訴。
一審は住民の請求を却下。住民は判決を不服として請求額を300万に減額して控訴。
これに対し二審の判決は、眺望権としての根拠がなく、住民の主張は認められず却下されました。
理由としては、住民が住んでいる地域は当時は住居地域で、その後第一種中高層専用地域になりましたが、マンションの敷地は住民の地域と第一種住居地域にまたがっています。なので、ある程度の高さの建物が建つことは承知していた事。
マンンション計画は最初5階建てでしたが、近隣住民の要望を受け入れて4階に縮小した事。眺望に関しては計画前の旧建物の屋根越しにわずか山並みが見えていた程度のものであった事。そのことを踏まえれば受忍限度内のものであると裁判所は判断したのです。
2018年12月、奈良公園内のホテル整備計画は都市公園法などに違反しているとして、近隣住民56人が県に現状変更と公金支出の差し止めを求めた訴えで、現在も係争中です。
計画は、事業者であるヒューリックが提案した施設を建設・運営するPPP(官民連携)を活用した、高級旅館「ふふ 奈良」で、地上2階の鉄骨鉄筋コンクリート造で、延べ面積は約3950m2。
そして2019年8月には、近隣住民8人が県を相手取り、「都市公園法上の『公園施設』を装わせて高級ホテルの建設を進めようとしている」として、ホテルの設置許可処分の取り消しを求める訴えを奈良地方裁判所に起こしました。都市公園法とは、地震等災害時における避難地等としての機能を目的とする施設であることから、原則として建築物によって建ぺいされない公共オープンスペースとしての基本的性格を有するものである、とされています。
実はこの法律の経緯 は、住宅、学校等公園の機能と無関係な建物による敷地の占拠等により都市公園が荒廃し、法整備されたものです。そして、都市公園の占用が公衆のその利用に著しい影響を及ぼさず、かつ、必要やむ を得ないと認められるものであって、政令で定める技術的基準に適合する場 合に限り、占用の許可を与えることができるとされたのです。
ただ現在は、都市計画を変更することで、社会福祉施設の設置が可能ではありますが、収益優先のホテルは都市公園法としては認められないものでしょう。


マンションに対する損害賠償
不動産及び建設請負会社、Aは東京都の世田谷区と目黒区にまたがる土地を東京都などから購入し分譲マンションを建てました。ところが近隣住民合わせて21名から不法行為に基づく損害賠償として、財産的、精神的損害及び弁護士費用相当額の損害の賠償を求めて来ました。
原告らの主張は景観権又は景観利益、圧迫感のない生活利益、日照権及びプライバシー権を侵害されたと主張して、建物のうち高さ12メートルを超える部分の撤去、及び建築工事に関し騒音・振動・粉塵等にさらされたことによる精神的な被害、工事の振動による原告ら所有建物損傷の被害及び建物により原告らの所有不動産の価値下落という被害です。
2005年東京地方裁判所は建築工事に伴う損害賠償請求の一部を認容しましたが、その他の請求は棄却しました。
建物の一部撤去請求については、相当の期間、ある特定の人工的な景観が保持され、社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ、地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合であることが事実としてある事。また、景観の内容と利益の享受主体が明確であることの二点を挙げました。裁判所はその2点を認めることが出来ないとしたのです。
損害賠償請求については、本件工事の解体工事に伴い発生していた騒音は少なくとも約3か月間にわたり、平日及び土曜日の日中、その自宅付近の屋外において、また、その室内においても相当の騒音にさらされていて、受忍限度を超えると認定しました。