空き家が危ないー2


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空き家が増える理由廃墟マンションの結末
1970年代当時、日本の住宅に対する考え方として、結婚後は小さな中古マンションに住み、次に中古一戸建てに移り、やがては郊外の新築一戸建て、という考えが一般的でした。
また、当時は優良な住宅が供給されてきた事もあり、新築住宅に住むのがステイタスとされていました。特に日本の経済の成り立ちは、住宅が一つ売れると、建材や設備が売れ、建築業界のすそ野の広さにより経済波及効果をもたらしたのです。この考え方が現在でも貫かれているのです。
そこで今問題になっている空き家ですが、なぜ増加するかというと、根本的な原因は新築のつくり過ぎにあります。
毎年90万戸程度の新築住宅を量産している日本に空き家が増大するのは当然と言えるでしょう。
例えば西欧の多くの国では、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計し、それを基に住宅政策を決定しています。2003年から10年間の各国の世帯数当たり新築建設をみると、低いのがスウェーデンの5.6%、イギリス7.2%、イタリア8.3%。大半が10%以下を見込んでいます。イギリスと同じ7.2%なら年間着工は35.9万戸程度、イタリアと同じなら41.47万戸。10%にするなら49.9万戸程度が適正になります。
これに対して日本の適正な新築数は45万戸程度でしょう。今や少子化による影響が表れています。それに加え、非正規雇用率の増加、所得の低下、晩婚化などがあり、持ち家に対する若者の考え方が変化しています。
持ち家志向を持たなければ、不動産需要は大幅減となるのです。
滋賀県野洲市にある築47年の3階建て鉄骨造の分譲マンション「美和コーポ」があります。
しかしその外観は空き家というよりも廃虚マンションと呼べるほど、老朽化が進んでいます。
市の税務課によると、全9戸で延べ面積は400m2程。管理組合が存在しないため、メンテナンスは行われておらず、築40年経過した2012年ごろから経年劣化が目立ち始めました。
その後、市生活安全課に、「手すりがぶら下がっている」「階段が崩落している」などの苦情が入りました。市の指導によって当初は、所有者らが落下する危険のある手すりの撤去などを行っていました。
しかし2018年、地震や台風によって崩落する部位が急に増え、市の担当者は、「2018年6月に発生した大阪北部地震で市道に面した外壁が崩落して、室内が丸見えになった。
その後も立て続けに上陸した台風によって3階の内壁が外に落ちるなど、危険な状態が続いていた」といいます。
市は2018年9月に立ち入り調査し、空き家対策特措法に基づく特定空き家に認定。その後は所有者に対し、危険な部位の撤去などの改善を指導。
しかしながら一向に改善措置がなされないので、2019年3月、10人の区分所有者に対して、空き家対策特措法に基づく解体を命令
しかも2019年5月7日までに自主解体が実施されなければ、行政代執行による解体が2019年11月中旬に行われる予定です。
集合住宅の場合、解体には原則、所有者全員の同意がいるが、所有者9人のうち解体に同意したのは3人のみ。
行方不明を含めて明確な
意思表示がない人が多数を占める状態です。そのため市が代執行を決めたのです。
市長によると、鉄骨保護材にアスベストが含まれ、老朽化によって外壁パネルは剥落しており、周辺にアスベストが飛散する可能性があるために、行政が責任を持って危険を除去する必要性を訴えています。
解体のために市が予算化した費用は、工事に必要な土地の借地代なども含め1億2500万円に上る。すべての所有者の合意形成ができない場合、危険な建物を除去するには代執行という手段を使わざるを得ず、税金で負担することになるのです。しかし今後どれだけ回収できるかは分からない状態です。
2020年1月代執行は行われました。


空き家が増える理由-2非住宅の解体
現在の日本では空き屋を取り壊さないで残しておいた方が得な制度となっています。
それは、固定資産税や都市計画税の問題です。
老朽化した建物を解体して更地にすると、固定資産税が最大4.2倍に増えてしまうのです。今の日本の税制では、土地上に建物が建っていると、土地の固定資産税や都市計画税の減税を受けることができます。
ですから、わざわざお金を使って解体する理由がないのです。また、都市計画道路にまたがっている土地では、建て替えた場合、以前より大きな建物が出来ないところがあります。
狭い4.0M以下の道路に面している土地は、建て替えた場合は4.0Mまで道路を拡張せざるを得ない事により、狭い土地での建て替えになります。そのような土地を売ろうとしても、標準の単価では当然売れないでしょう。
貧困な道路行政の犠牲になっている土地が沢山あります。よって老朽化した空き家を取り壊さずに放置した住宅が増えるだけです。
北海道室蘭市の鉄骨造4階建ての商業ビルとして使われていた築48年の「サトウビル」。
しかし2018年9月に発生した北海道胆振東部地震で被災しビル外壁の一部が市道へ落下。2008年に外部のはしごが落下。その後も窓ガラスの破損など事故が発生するたびに市が応急対応していた。
2017年7月に空き家法に基づき特定空き家等として認定。室蘭市は建物内部での内装材落下やアスベストを含有する耐火被覆材の剥落を確認し、開口部分を塞ぐなど応急対策を施した。
こうした応急対策や調査の費用1026万円は市が負担した、と言うよりは、市民の税金で負担したのです。
そして2019年5月に空き家法に基づき除却の命令を所有者などに公告。措置期限の2019年6月解体事業者の入札を行いました。
略式代執行の目的はアスベストの飛散やさらなる崩落などの危険を排除する事です。この解体による費用も、結果市民の税金が使われるのです。


空き家の発生
終戦から1960年代にかけて、人口が著しく増加し、そのため住宅の不足が深刻化しました。
そうなると、都市部では地価の問題があり、郊外に宅地開発をせざるを得なくなり、しかも急務の問題が重なり、安く、質の悪い住宅が丘を削り次々と建設されました。
郊外に行くと丘の斜面にへばりつくように住宅が密集しているのを、見る事が出来ます。
ところが現在は人口減の時代になりました。
しかも新築住宅は続々と増えています。
当然以前よりも質の高い住宅です。それに加えて、便利な都市部に人口が集中しています。
都市部では、中古住宅を建て替えても採算は合いますが、郊外では、建て直してまでの採算は合わないのです。
結局、不便で、快適ではなくなった住宅には、人が離れてしまいます。
しかも、相続の問題で、負の遺産として家を継がなくなり、空き家として残ってしまうのです。
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