地盤沈下ー2


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怖い水浸沈下地震後の沈下
昔から,宅地盛土の水浸沈下による住宅被害の事例が数多く報告されています。
現在、盛土の宅地においては、整地を行い、その上を土を突き固める転圧を行っています。
その締め固め不足の土砂には空隙が多く、土粒子間の接点に存在する水の表面張力によって、かろうじて自立が保たれている状態なのです。
そこに大雨による豪雨が発生し、大量の雨水が侵入すると、土砂の空隙に水が浸入し、飽和状態に陥り、そのバランスが保てなくなり、沈下が生じることになるのです。
一方,十分締固められた盛土では,沈下は起きないのです。降雨後に埋土が沈むなど水締め効果的な要因が多いことから「水浸沈下」ともいわれています。
地盤の盛土の土地に住宅を建設する場合は、地盤調査として、一般的にスウェーデン式サウンディング試験を行います。それを元に地盤の補強を行うかどうかを判断します。
しかしこのスウェーデン式サウンディング試験だけでは変形に対する評価が難しく,宅盤の品質を保証 しているとは言い難いのです。
2018年9月の北海道地震から半年以上が過ぎた頃、不同沈下などの被害が出た宅地で、液状化が原因だったと新たに分かるケースが出てきています。
1978年に三井不動産が傾斜地を切り盛りして平らに造成し、分譲した宅地で、新たに液状化などの原因が判明しています。東側には札幌市内で液状化被害が集中した清田区との境となる吉田川が流れ、南側は吉田川公園に隣接。地震後、切り土と盛り土の境界付近がたわむように、最大で30cmほど沈下したのです。
札幌市は宅地内を通る道路12カ所と吉田川公園内でボーリング調査を実施。地下水位や土質調査の結果から国土交通省の基準に従って液状化判定を行ったところ、宅地内の道路の1カ所を「液状化危険度が高い」と分類しました。
この後、住民説明会で、「地下水位が高い場所は液状化、低い場所は切り土と盛り土の境界における地盤強度の違いが主な原因」と説明しました。
切り土と盛り土の境界は、造成する際に埋設した暗きょのほぼ真上に位置しています。そのため、暗きょ内部への土の吸い出しで地中に空洞が形成され、それが地震で潰れて地盤沈下を引き起こした可能性を指摘する専門家もいるのです。



危険な宅地販売不同沈下裁判
2018年9月の北海道胆振東部地震で、大規模な液状化現象が発生した札幌市清田区里塚地区の古い造成地に隣接する地域での問題です。
2004年に大手住宅会社が建築条件付きで販売された住宅地には、築12年以上経過した軽量鉄骨造の住宅が立ち並んでいます。
がしかし、大きな地震によって地割れが発生しました。その影響で、地盤が数㎝沈下し、基礎の内側にクラックが見つかったという報告があり、3住戸で半壊以上、2住戸で一部損壊、3住戸で一部損壊未満の沈下被害が発生しました。
この地区は、過去に水路や沢があり、その後複数回にわたって盛り土された土地だったのです。
実は、販売時に住宅会社は切り土と説明したのでした。ところが、地震後に市が配布した資料により、実際は盛り土だった事が判明したのです。
『地盤補強の必要がない切り土』『岩盤のように固い地盤』という営業マンの説明と、会社が大手であることを信じて土地を購入した人が多いのです。
2019年6月、住民たちは販売会社に質問を預けた所、沈下修正費用の負担などの要求には応じない模様です。
問題は、販売時に重要説明義務を偽っていたことです。
1993年11月、建築主Aは請負業者Bと建築請負契約をし、1994年3月、引き渡しを完了しました。
1998年10月、Aは浴室の 排水パイプの継ぎ目が折れ、浴室下に空洞が できているのを発見し補修していたと ころ、基礎のひび割れを発見し、建物が 不同沈下している事がわかったのです。
Aは、Bが地盤対策を行うこと なく建築工事を進めたのは、不法行為に基づく損害賠償として福岡の裁判所に提訴。一審では、不法行為に基づく損害賠 償金として、補修工事費用948万円余及び調 査費用60万円余の合計1,008万円余と、建物完成から5年間の遅 延損害金を認めました。
しかし双方とも不服と して福岡高裁に提訴。そして、高裁の下した判断は、不同沈下による損害は、過失相殺を適用し、遅 延損害金の起算日については、建物の不同沈 下による損害が発生した1998年4月1日と して、一審の判決を一部変更したのです。
理由としては、敷地の一部に極軟弱地 盤が存在していたのは海岸近くの丘陵地の開発地ゆえに、どこでも見られることである から、地盤調査をしなかったのは義 務違反があるとしました。
しかし1999年に成立した「住宅 の品質確保の促進等に関する法律」施行 後は、住宅でも地盤調査を行うこ とが一般的ではあるものの、設計が行われた1993年当時、多くは設計者の経験と勘に頼って いた実情でしたので、敷地の北側には地山があったことや、敷地及び付近の外観などから、Bが現地を見て地山と判断したことも根拠のない判断ではないとしました。
又、建物の不同沈下に与えた影響は、建物の荷重よりもAが後に行った庭の盛土等の荷重の方が大きく、約2.5倍である事。
それらにより福岡高等裁判所は、建物の損害は、弁護士費用を除く全損害額から4割を過失相殺し、遅延損害金の起算日については、客観的に同損害が発生したときに遅滞に陥るというべきであるとしました。



工事による地盤沈下裁判
道路工事業者が道路の拡張工事を行った際、道路に隣接した住民が自分の土地の地盤沈下及び土地上の建物が損傷を被ったと主張して工事業者に損害賠償を求めて訴訟を起こしました。
工事業者は、行政の事前調査結果及び事後調査結果から本件土地については地盤沈下がないことを主張。
この土地が軟弱地盤であることや建物が老朽化していることが地盤沈下の主な原因であり、工事施工時点で工事業者が知りうる立場にないことから、工事業者に過失はないことを主張しました。
一審の判決は、土地の地盤沈下を認めるとともに行政及び工事業者の過失を認め、住民の損害賠償請求を一部認める事になりました。この一審判決に対して工事業者と行政は控訴をしました。
最高裁の控訴審においては現状の地盤や建物の状況を確認するため、さらに詳しく測量調査が行われました。
そして工事、行政側は、測量調査の結果から地盤沈下とは言えないことや過失がないことを再度主張。結果、最高裁の判断は、地盤沈下が生じたことを否定するとともに、請負業者及び行政の過失責任がないことを認め、一審判決で認めた損害賠償を取り消しました。この裁判は、一審の訴訟提起から控訴審で終了するまでに5年以上もの時間がかかったのです。
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