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事前説明の確認が重要不利益な賃貸契約
2005年6月、Aは不動産業者Bから、土地付き新築建物を購入し9月に引き渡しを完了しましたが、Aは購入後の7月に隣地との境にあるブロック塀の控え壁が出ていることに気付き、Bに聞いたところ「昔からの申し送り事項なので」との答えでした。
2006年4月、「物件状況報告書」を見直したところ、「越境無し」と明記してあることがわかり、Aは越境物は契約時に聞いていないので除去してほしいとBに要望したところ、越境物は隣地の所有であること、撤去はするが、ブロックが倒れても一切責任は負わないとの返事でした。
それと同時に、契約書の特記事項にある地目変更登記がされていない事がわかり、登録免許税を多く払っていた事がわかりました。
そこでAはBに対して、越境物の撤去、地目変更登記不履行及び司法書士報酬の説明不足による損害として10万円、Bの威圧的言動などによる精神的損害への慰謝料338万円などを要求。加えて、汚水枡の越境及び門扉の設置が不適切であることを主張。
これに対してBは、越境物は撤去する用意はあるが、塀の倒壊等の責任は負えない事、現地で私道部分と建物の位置関係は説明しており、越境物は将来道路となる部分にあり、生活する上で支障はない事、そして地目変更登記は、直ぐに対処する用意があり、解決策として、本物件を売却価格で買戻すことも検討する、と主張しましたが、折り合いが付かず紛争となりました。
調停委員はAに対して、要求のような多額の慰謝料請求は難しい点をよく説明して説得したところ、Bの誠意ある対応が約束されればAは慰謝料の請求はしないとの結論に達しました。
結果、調停委員からBに対して、ブロック塀の控え壁の撤去、汚水枡の撤去、門扉の移動についての工事方法提案を要請し、提案内容についてAも納得したため、和解が成立。
大きな金額が動く契約の時は、時間をかけてでも、契約以前に徹底的に質問をするべきなのです。
1996年3月、Aはある賃貸住宅をBとの間で賃貸契約をかわしました。そして2004年3月に賃貸契約の更新をしました。
2004年7月には住宅の所有権がBからCに替りました。
2004年9月、Aは賃貸契約を終了し、Cに対して預け入れた敷金13万円余の支払を求めました。
Cは、2002年の更新契約において、汚損や破損による損害を賠償する義務事項があり、また、2004年9月に原状回復に関する費用負担の合意があることから、実際の原状回復費用18万円余をAに請求。
敷金の13万円余では足りないので、残額4万円余の支払いをAに求めました。
Aは不服を裁判所に申し立てたのです。2005年11月東京簡易裁判所の判決があり、Aの勝訴となりました。
判決内容は、賃貸住宅使用の対価である賃料を受領しながら、賃貸期間中の自然損耗等の原状回復費用を借主に負担させることは、借主に二重の負担を強いることになり、貸主に不当な利得を生じさせる一方、借主には不利益であり、信義則に反し消費者契約法10条に該当し、無効である、との判断でした。
たとえ賃貸借契約書に自然損耗等に係る原状回復義務を借主が負担すると定められていても、借主に必要な情報が与えられず、自己に不利益であることが認識できないままされた合意は、無効であるとしたものです。


事前説明の重要性投資家がハマる融資
ある新規分譲マンションの不動産会社Aはペット飼育禁止のマンションとして販売。
マンション管理組合が設立されたのちに、既にペットを飼育している入居者については、現在飼っているペットが一代に限り飼育を認めることが決議され、管理規約案にペット飼育の禁止条項が追加されました。
ところが、ペット嫌いの購入者Bに対して、不動産会社Aは「ペット飼育禁止」と説明し又、ペット好きの購入者Cに対して、不動産会社Aは「ペット飼育可能」と異なる説明をし、B及びCは入居を決めたのです。
ただ、それぞれ入居後、B及びCは苦痛を味わう事となり、Aを相手に裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしました。
結果、裁判所はB及びCの請求を認め、Aに5日間の業務停止処分を言い渡したのです。
裁判所の見解は、買主にとってペットの飼育ができることがマンション購入を決める重要な要素であることを十分に承知し、分譲開始当初にマンションを購入した者からペット飼育についての了解が得られていないことを認識していたにもかかわらず、そのことを告げずペット飼育ができるマンションとして販売したとしての処分でした。
マンション販売の営業マンにとっては、数値目標がすべてであり、目の前の成績が営業マンの評価そのものです。ですから、とりあえずの数値だけにしか頭が回らず、の結果なのでしょう。
マンション購入時に受ける説明は、数人の関係者からの聞き取りが重要です。
マンション開発業者「コーセーアールイー」は、2016年から2018年の間に、銀行へ提出する源泉徴収票などに記載されている収入の額を100万円程度引き上げたり、中古物件の入居者から徴収している賃料の数字を書き換えたりと、改ざんしたのです。
2019年12月、ローン申請書類の書き換えの疑いが発覚したと発表。改ざんの目的として考えられるのは、与信の低い顧客に物件を購入させることです。
金融機関が住宅ローンの融資額を決める基準の1つに「年収倍率」があります。顧客の年収を100万円上げれば、年収倍率が5倍なら借り入れ金額は500万円、10倍なら1000万円増加し、購入できる物件の幅も広がるのです。
ただし、投資家の債務不履行リスクを高める事になります。
値頃さが売りだった区分マンションですが、土地代や建築費の高騰を受け、2019年までに、価格は上昇して行きました。
資産に乏しい投資家にとっては、物件の購入が難しくなりつつある時でしたので、飛びついたのでしょう。
2018年8月に発覚したアパート建設業者「TATERU」による融資書類の改ざんもありましたが、同じような手口の誘惑についついはまってしまうのでしょうか。


売買契約解除地中埋設物の契約違反
新築マンションの購入を決定したAは、不動産業者Bとの売買契約を締結しました。ですが、Aの会社の転勤が突然決まり、Bに手付金の放棄による契約解除を申し入れました。しかし、Bは「工事が進んでいるので手付解除には応じられない。違約金を支払ってもらう」との回答でした。
不動産会社が売り主である、不動産売買については、手付金は「解約手付」とされ、売り主である不動産会社が契約の履行に着手する前であれば、買い主は手付金を放棄することで契約を解除できるのです。
Aが手付けによる解除をする場合には、その時点でBが「契約の履行に着手しているかどうか」が問題となります。
契約の履行に着手しているとは、過去の最高裁判所の判例によれば、買い主の希望する建物を建てるために建築材料を発注したときや建築工事に着手した時、或は、分譲マンションで買い主の希望する間取り変更工事に着手した時などです。
しかしながら、分譲マンションや、大規模な分譲住宅の場合で、売り主が当初の建築計画に基づいて工事に着手した場合などは、履行の着手には該当しないと考えられます。
もし履行の着手がなされているのであれば、契約書に定める違約金を支払う事になります。
2012年、AはBから土地及び土地の借地権を更地状態で 売買する契約を締結。そしてBは建物の解体工事をCに発注。2014年解体 工事が終了したとしてBはAに土地を引き渡しました。
その後Aは不動 産業者Dに転売。しかしDは新築工事の際に地中から地下室が発見さ れたことから、地下室や解体ガラが地中に 残置されていたとして、A及び解体工事請 負業者B、Cに対して、その撤去・処分費用の支払 いを求めました。
これに対して、Bは地中の異物をすべて撤去すべき義務を負っていないとし、さらにCは建物の解体工事を完成させており、地中障害物を埋め戻した事実はないと反論。さらに土地は、戦時中、防空壕として利用されていたことがあり、地中障害物は防空壕の一部であった可能性があると反論しました。
しかし裁判所の判断は、Dの請求を認めました。
理由として、解体撤去の対象となる建物には地下室が含まれる旨が明記されている事。そして Bは、地下室を含め、各建物を撤去すべき義務を負っているもの と認められる、としました。そしてCは、地中障害物を完全に解体撤 去せず、建物の鉄筋及びコンクリートガ ラとともに土地に埋め戻したものと認め られる。そして、Cは地下室を含めた建物を完全に解 体撤去すべき義務を履行しなかったことにつ いて債務不履行責任を負う、と結論。
Aは、Dに対してに解体撤去費用等としての賠償請求1472万円余を支払いました。
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