地震に弱い建物


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不安定長周期地震動に弱い超高層
一般的に建物は重心と剛心」のズレが少ないほど安定しているとされています。阪神大震災では、それをあまり考えていないような建物の倒壊が多く見うけられています。これはバランスに関する問題です。
例えば間口の狭いノッポビルの場合は道路から見て奥側にEVや階段の「コア」部分を設け、前面には店舗があり、道路側開口一杯に窓を設ける建物をよく見かけます。この場合は剛心が道路奥になってしまいます。
又、法(建築基準法)上による、道路及び北側斜線等により「コア」部分が端に行きやすいです。そのように色々な条件等により「不安定」な建物は結構町中には溢れています。安定重視を考え、無理矢理プランを考えるのも非現実的な場合が都市の中では多いのも事実でしょう。
2007年7月、京都市の耐震診断において、国の重要文化財である二条城の本丸御殿4棟のうち、2棟が震度6強以上の地震で倒壊する恐れがあると発表しました。理由は瓦屋根の重さが原因でした。これは阪神大震災でも注目されましたが、重心が上部にあるため、不安定になる事です。
2007年7月16日の新潟中越沖地震の時、瓦を土で固めた思い屋根の古い建物が軒並み倒れていました。
柏市では冬、北風が強く吹付ける為に屋根を飛ばされないよう瓦を土で固める昔ながらの手法がアダとなったのでしょう。



2008年3月、兵庫県にある振動実験施設「E-ディフェンス]で実験が行われました。80年代に建てられた初期の高層建物を再現。想定する高さは80mで、21階建て。地震波は、東海地震発生すると考えられている長周期地震動で,名古屋市三の丸地区がどのように揺れるかです。
実験前、研究者チームの間では 接合部は壊れないと考えていました。しかし柱と梁の接合部に破断個所が見付かったのです。
結果、繰り返しで襲う揺れに見舞われると、想定していない壊れ方をすることがあり得る事。長周期地震動で構造に被害を受ける可能性は高いとの結論です。
東京の新宿センタービル(223m)では2008年10月から補強工事を始めました。2009年に20億円をかけて制振装置を288台を設置完了。2011年の東日本大震災でのビルの揺れ幅は最大で108cm。ただ、装置が無ければ140cmの揺れに達したとの予想があります。ほぼ22%の揺れの低減が出来たのです。
2010年12月、国土交通省は超高層ビルや免震建物を対象とした既存の超高層ビルについて、所有者などに長周期地震動の影響に関する再検証を求める、長周期地震動対策の試案を発表。
新たに超高層ビルを建てる場合は、長周期地震動の影響を考慮しなければ、原則として建設を認めない方針です。既存の超高層ビルでは、構造安全性の再検証を求めます。
超高層ビルは全国に現在、約2500棟あります。国交省によると、再検証の対象となるのは固有周期が特に長いもので、全体の2~3%程度と想定しています。
2011年3月、日本建築学会は、東海・東南海・南海の三つの地震が同時に起こる「三連動地震」に伴って発生する「長周期地震動」により、東京、名古屋、大阪の三大都市圏にある超高層ビル(60メートル以上)で、振れ幅2~4メートルの揺れが最大で10分程度続くとする調査結果をまとめました。
超高層ビルが崩壊する可能性はほとんどないといいますが、建物と地面の揺れやすい周期が一致すると、梁の端が折れたり、傾いたままになったりするなどのおそれがあるらしいのです。被害を受けやすい建物は100棟以下と推定されていますが、耐震補強の必要があります。 
08:30

中間階のつぶれピロティが危ない
阪神大震災においてよく見られたのが建物の中間階の崩壊でしたね。その当時は、柱の断面の大きさを、上階にいくほど細くする事が多いようでした。
つまり断面の大きさが上階に行くに従がって直線的に細くなるのに対して、地震の建物に対する力は曲線であるが故に、その断面が足りない部分での崩壊が考えられています。(まだ解明はされていませんが)
新耐震設計後はその点を改良しているようです。現在では、柱、梁共に同じ大きさで建てる事が多くなっています。(そのほうが施工が簡単である事の理由も含まれていますが)
1994年カリフォルニアのノースリッジ地震で倒壊した建物に多く見られたのが、1階部分が駐車場で、その上部が住宅であるタイプの建物でした。1階部分の駐車場は完全に潰されていたのです。いわゆる「1階部分が「ピロティ」形式と呼ばれています。阪神大震災や、それ以前の宮城沖地震でも問題になっていました。
1999年の台湾地震でも、この傾向はよく見られていました。台湾では行政上、駐車場の設置が義務付けられ、1階、或は地下に駐車スペースを設ける例が多いようです。日本でも一定基準以上の住宅戸数があれば駐車場の義務付けが(各官庁により異なる)あります。
上階の住宅部分で耐震壁があろうとも、その壁が1階まで繋がっていなければ意味がありません。1階に店舗があれば壁がじゃまになるのもうなずけますが、構造計算上では解決出来ても実際の地振動に耐えられるのでしょうか。疑問が残ります。
08:30


木造住宅の怖さ
1995年の阪神淡路大震災後の2005年、E-ディフェンスでは、耐震性の劣る既存木造住宅を、今後に必ず来る大地震に備えるため、どのように対処すべきかを課題として、実大実験を実施しました。
試験体は築31年の無補強木造建物と、同一の施工業者が同時に施工した、耐震補強を施した建物を二つ並べて2棟を移築し同時に揺らし、耐震補強の効果を、実大実験によって一目見て分かるものにしました。
兵庫県南部地震(震度7)で観測された地震波で揺らした結果、補強しない住宅では1階が完全に潰れてしまう一方で、耐震補強を施した住宅は、外壁や庇の落下などの損傷はあったものの、なおしっかりと立ち続けていました。
無補強の木造住宅は接合部が破壊して倒壊するため、ベタッと倒れ込むような形で壊れます。内部では、室内に家具などが何もなければ、柱や梁、天井、壁が倒れ込んで内部空間をつぶしてしまうため、人間の「生存空間」が残りません。阪神大震災では、こうした住宅の倒壊が、亡くなった方々の死因では最多でした。
 この実験に用いた2棟の住宅のうち、耐震補強によって倒壊を免れた棟では、一般的な工事費に換算すると約130万円に相当する耐震補強を行っています。現実に各自治体が行っている補助は数十万円であることが多いですから、やはり金額に開きがあります。
古い木造住宅の耐震補強は緊急課題ですが、実際には補助との差額が「壁」となって補強が進まないのが現状です。
一方阪神大震災で、家具の転倒そのものが主因で亡くなった方は2%程度ありました。しかし実際に確認された例ですが、タンスなどの家具によって「生存空間」が確保され、住民が生き残った例が200例近くもあったのです。
家具が生き残るための有効な手段であるとも言えるのです。
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