水害の恐怖ー2

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不安なスーパー堤防河川の氾濫
大都市を水害の被害から守るべきスーパー堤防が東京の江戸川で行われています。整備計画の規模は当初、延長が870kmでしたが、民主党政権の事業仕分けを経て2011年に約120kmに縮小。
その後一部の工事が終わり、共同事業者として区画整理を進める東京都江戸川区が地権者への引き渡し直前の2017年2月、地盤の品質確認のため土地の強度を測るスウェーデン式サウンディング試験を実施。所が強度不足という大きな問題が持ち上がりました。
強度不足があったのは北小岩1丁目東部地区のスーパー堤防とみられます。そのため地盤の補強工事が必要になり、引き渡しの期限が半年遅れて2017年9月末となったのです。
工事担当の関東地整は事前に盛り土で地盤に荷重をかけ、沈下を促進させる工法で強度を確保できると見込んでいましたが、実際は想定以上に地盤が軟弱だったのです。
造成後に地盤強度を調査せず、調査の時期や方法について江戸川区とあらかじめ十分に協議することもなかったのです。関東地整が今後スーパー堤防の整備を計画する地域は、約3割が木造住宅の密集地帯。宅地の品質が安定しなければ地権者の同意を得ることは難しく、整備の進捗に影響が及ぶことから、事業の進め方を見直すことにしました。
スーパー堤防の事業が始まってから、30年になりますが、本来の断面形状ができたスーパー堤防の整備率は対象の5河川全体でわずかに2.9%です。計画通りに整備が終わるまで、何百年という年数が必要になるのです。
最近の、水害が多発している今こそ必要とされているのにも関わらず、前途多難です。
2019年10月、大型の台風19号が伊豆半島に上陸し、神奈川県箱根町で48時間に降った雨の量が1000ミリを超えるなど、東北や関東甲信越などではわずか1日から2日の雨量が年間降水量の3割から4割に達する記録的な豪雨となりました。
そのため各地で川の氾濫や土砂災害が発生しました。
主な川の氾濫箇所は、宮城、福島県の阿武隈川。宮城県の吉田川。埼玉県の入間川。新潟、長野県の千曲川。栃木県の秋山川。東京、神奈川県の多摩川。など20を超える河川において河川の氾濫が発生しました。
この多摩川においては、1974年9月台風16号により堤防が決壊し、狛江市の民家19戸が流出。その後、家を失った住民らが多摩川を管理する国を相手に損害賠償請求の訴訟を起こした。
一審は原告の住民が勝訴。控訴審は国が勝訴したが、上告審で破棄差し戻しとなり、1992年、東京高裁差戻控訴審では住民が勝訴したという過去がありました。
いずれの川沿いも、住んでいる所は川の水面と同じ0メートル地帯なのです。いかに危険な場所に住居を構えているのかが解ります。



最悪の台風九州豪雨
2019年10月「過去最強クラス」の勢力で関東・東北地方を襲った台風19号。浸水面積は2018年の西日本豪雨を大幅に上回り、2万5000haを超えました。東京都や神奈川県でも、多摩川流域に多くの建物が浸水し、都市水害の恐ろしさを日本国中に知らしめたのです。

台風19号西日本豪雨
2019年2018年
死者・行方不明者99人232人
住宅全壊1491棟6767棟
住宅半壊5400棟1万1243棟
床上浸水3万3425棟7173棟
床下浸水3万7358棟2万1296棟
堤防の決壊71河川、140カ所26河川、37カ所
土砂災害748件2581件

堤防の決壊数」は、西日本豪雨をも上回ったのです。
2020年7月の豪雨災害は九州をはじめ全国11県に大きな爪痕を残しました。
特に九州を襲った記録的な豪雨は、死者70人以上、浸水1万棟以上、農産物総額158億円という甚大な被害を被りました。
大分県日田市では、72時間の降水量が862ミリを記録。そして浸水被害も大きく、熊本県の球磨川流域にある人吉市街地の浸水は最大で4・3メートルに達したのです。
この豪雨で出された『大雨特別警報』は50年に一度あるかないかというレベルを超える大雨が長時間続くようなときに出るものですが、運用から7年の間に4回出ているのが福岡と長崎。3回が佐賀と沖縄。2回が計6府県にのぼります。
近年語られている、気象レーダーによる線状降水帯が豪雨の特徴ですが、これはレーダーの性能が昔より格段に良くなったからであり、昔もあった現象なのです。
今回も問題になりました避難所の浸水。ハザードマップに頼らずに、避難所の安全な位置の確保が求められます。


岡山真備町水害低地売買の説明義務裁判
2018年6月から7月にかけ、梅雨前線が停滞。この前線と同時期に発生した台風7号の影響で、日本付近には暖かくて非常に湿った空気が供給され続け、結果として広い範囲で記録的な大雨がもたらされ、大災害につながりました。
特に被害が集中したのは広島や岡山、愛媛であり、それぞれが甚大な被害となりました。死者
237人となり、岡山県66人、広島県92人、愛媛県31人でした。
中国電力と四国電力では停電被害が相次ぎ、中国電力で最大約58,700戸、四国電力で16,600戸、ガスや高圧ガス、LPガスでも一時供給ができなくなる事態になりました。
水道についても全国18道府県80市町村において最大263,593戸の断水が確認されています。
岡山県は倉敷市真備町に雨が集中するなどの特徴があり、真備町だけで51人もの命が奪われることとなりました。これはハザードマップで示された想定浸水区域に住んでいた人々であり、予め避難指示が出ていたにも関わらず、それだけの死者を出してしまう結果となりました。
2020年7月、倉敷市真備町の住民5人が2018年の西日本豪雨で浸水被害を受けたのは河川やダムの管理が不十分だったなどとして国や県などを相手取り約9100万円の損害賠償を求める訴えを岡山地方裁判所に起こし、2020年4月に住民32人が同じような訴えを起こしていて今回で2回目の提訴です。これで原告は37人になりました。
 原告は国、岡山県、倉敷市、ダムを管理する中国電力に合計約7億3000万円の損害賠償を求めています。
原告側は、新成羽川ダムの事前放流量が不十分だったことや高梁川と小田川の付け替え工事が先送りされたことなどが重なり、被害が拡大したとしています。真備水害については、事前に予期し得たものであって相当な準備さえしておれば未然に防ぐことができた人災であるものと主張。
Aは1998年、建売業者から土地を購入。ただその時売主からも、媒介業者からも、その土地や周辺の雨水の排水状況等について、特に説明はありませんでした。
そこでAは、購入した土地には、大雨のときなど容易に冠水し、宅地として使用することが出来ない隠れた瑕疵があり、売買契約の際、売主からその説明を怠ったことは債務不履行(説明義務違反)に当たるなどと主張して裁判所に提訴。
結果、一審の地方裁判所はAの請求を棄却したため、Aは東京高裁判所に控訴。
2003年、判決としてはAの請求は棄却されたのです。
判決理由としては、地盤が低く、降雨等により冠水しやすいような場所的・環境的要因からくる土地の性状も、その土地の経済的価値に影響が生じることは否定出来ないものの、冠水被害があることは、付近一帯に生じることが多く、付近一帯の価格評価の中で吸収されているのであり、それ自体を独立して、土地の瑕疵であると認めることは困難である。よって、売主の瑕疵担保責任を認めることは困難である事。
又、売主である宅建業者は、売買契約に付随する信義則上の説明義務を負いますが、売主である宅建業者が、土地の性状に関する具体的事実を認識していない場合にもその説明義務があるというためには、そのような事態の発生可能性について、説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠、あるいは業界の慣行等があり、また、そのような事態の発生可能性について、業者の側で情報を入手することが実際上可能であることが必要であると解されます。
土地に接する道路に雨水が貯留しやすく、それによって土地の一部が冠水するという土地の性状について、宅建業者を含む販売業者に説明義務があることを基礎づけるような法令上の根拠や業界の慣行等があるとも認め難いから、売主には土地の性状についてAに説明すべき義務があったということはできないとの結論です。
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