欠陥建物事例ー4

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危険な階数水増しー2浸水マンション裁判例 
大阪府池田市の賃貸マンション「マテリアル菅原」は、建築確認申請を民間の指定確認検査機関ジェイネットに提出。
その後2度の中間検査を受け2012年7月の完了検査時、7階建てにもかかわらず、現状は9階建てになっていたために検査済証を交付しませんでした。
その後検査機関は、建物の正確な図面や構造計算書などを提出するように求めました。
しかし工事完了後、建築主は入居者を入れたのです。
検査機関から報告を受けていた市は、2013年8月建築基準法に基づく是正措置命令書を送付。建築主は違反建築物であることは認めたものの、そのまま所有権を兵庫県宝塚市の女性に譲渡。
2015年10月、市は女性に対して命令書を送りましたが、具体的な行動は無いままでした。措置命令にマンション所有者が応じないため、市は是正措置命令を公告する「赤紙」をマンション入り口付近に掲示。
2016年10月に是正措置命令を出しました。2018年8月、結果7階建てに“減築”されました。
市は最終手段として、悪質な違反建築物は是正工事を行う行政代執行を実施する事も出来ますが、今回は建築基準法違反の容疑での刑事告発を視野に入れていたのです。
2019年の台風19号浸水被害に遭遇したマンションがありましたが、これは、以前の浸水マンションの裁判例です。

Aは、売主業者から、新築マンションの1階2室を購入し、1995年に引渡しを受けました。
本件マンションでは、しかし1996年9月、一階部分の各室に、床下浸水等の被害が発生。1997年7月にも、本件マンション一階部分の数室に床上浸水の被害が発生し、その後も、規模、被害の程度はあるものの、年に一回以上浸水被害が発生していました。
そのためAは、設計・監理会社にたいして損害の賠償を求めて提訴したのです。その理由は、基礎杭の安全性に欠陥、構造計算上建築確認と異なる建築工事が実施されている欠陥、一階部分に毎年のように浸水被害が発生する欠陥として、また売主業者には債務不履行責任、瑕疵担保責任、不法行為責任などを揚げたのです。
裁判の判決内容はつぎの通りになりました。杭長、構造に対しては証拠がないので、これを直ちに違法、または、建物として通常有すべき安全性に欠けるとは認められない。マンション完成直前に、一階部分に浸水する事故が発生した時に売主業者は、玄関に防潮板を設置したが、近隣にある類似のマンションでは、盛土をしていることが認められる。本件浸水被害は、浸水し易い状態なのに、盛土もしないで建築されたためであって、欠陥があるといわざるを得ない。
この欠陥は、売買契約の目的物の隠れたる瑕疵というのを妨げないから、売主業者の瑕疵担保責任を認め得ることが明らかである。
したがって、住居として使用するという目的を達成することが不可能であるから、Aは、瑕疵担保責任に基づき、本件売買契約を解除することができるというべきである、との理由でした。
結果Aが被った損害は、本件売買代金、購入費用、修補に関する費用及び調査鑑定、弁護士費用、慰謝料でした。


大臣認定品の不使用杭工事の施工不良
2019年8月、アパマンションに建築基準法違反のおそれがあるとして、国土交通省から、旭物産株式会社に対して、当該大臣認定品として製造し、納品した出荷先の報告を求めました。
2020年3月、旭物産株式会社はアパ建設が施工した物件であるとの報告をし、2002年から2005年に建設したマンションのうち、21棟で旭物産株式会社が製造・出荷した防火サッシに建築基準法違反のおそれがあるとの報告を国土交通省にしました。
アパマンション株式会社は、今後、対象となる物件の管理組合に速やかに連絡をし、建築基準法令に適合させるための改修を行う方針である事としました。
問題はサッシのカ硝子部分が問題でした。現実的には火災に対して問題はないかもしれませんが、国の認定品を使用していないと、建物自体に対して、国や自治体の保証が取れません。価値の無い建物として扱われます。
ですから、新しい技術を開発すると、自費で国の認定をとるために試験をして、認定を獲得しています。
建物に問題が起きた時、認定品を使用していれば、或は建築基準法を順守していれば、建物自体の責任は免れるのです。
1995年竣工した福岡市の「ベルヴィ香椎六番館」。実は、入居開始直後から外壁のひび割れや玄関扉の枠の歪み、建物の傾斜といった不具合があり、売主のJR九州に訴え続けてきたのです。
施工業者の若築建設などはその都度、「構造耐力上主要な部分に問題はない」「設計図書通りに確実に施工している」などと説明。
そこで2019年、マンションの管理組合は特定行政庁の福岡市に相談。ところが図書保存義務が過ぎており資料がなかったため施工の不備かどうかを判断できないと、責任逃れの回答でした。
2020年3月管理組合は、東京の調査会社に依頼。建物の歪み調査とボーリング調査を実施したところ、基礎杭が支持地盤に到達していなかった事がわかりました。
この結果を受けて若築建設も調査を実施したところ、同様の結果が出たのです。建物の杭は全部で29本ですが、支持地盤に到達していない杭は2本判明していました。
調査会社によると、10本程はあるのではないかとの判断です。
2020年5月JR九州など3社は施工不良を認めて管理組合に謝罪しました。
調査会社としては、建築工事中に初期沈下を起こしており、造作工事で調整している跡があることから、傾斜を承知しながら販売していたのではないかとの判断です。そして、施工業者にはJR九州が筆頭株主である九鉄工業㈱がJVとして参加していたのです。
欠陥建物事例ー1 
欠陥建物事例ー2
欠陥建物事例ー3 も参照してください